コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: あの星を探しに。 感動編、ついに完結! ( No.216 )
- 日時: 2013/05/06 18:23
- 名前: リア (ID: exZtdiuL)
第四話 【それも立派な感情なんだ】
あれからというもの、南は今まで以上に明るくなった。
そして、料理研究部に所属しているという西条、いや真美さんがいつも京香を連れて、部活終わりにやって来る。
そして、今日もやってきた。
「佳奈ー?帰ろー?今日はお母さんがカレー作ってくれてるんだって!」
「えー!?嘘!?帰る帰る!それじゃあ、お疲れ様でしたー!」
そう言って、俺たち部員に一礼をしてあっという間に去って行く南、ではなくて佳奈。
そんな様子を見て、俺たちは口には出さないが、心からよかったと思っている。
「そんじゃあ、俺たちも帰ろーぜー?だりぃし」
「安藤。お前は何もやってないだろう?」
神谷先輩がすかさず突っ込む。
それに対して、真剣な顔をして返す安藤先輩。
「心配すんな、神谷。俺は数学の問題集を解いていた!寝てなどいない!」
そう言って安藤先輩は今やり終えたばかりの数学の問題集を天井に向かって掲げる。
それを見て、斉藤先輩が強烈なお言葉を投げかけた。
「それ、今日提出のものではありませんか?もし、そうなら殺しますよ?」
「え…?」
いつもはのらりくらいと、そういうのは避けてきた先輩だったが、今回ばかりはそうもいかないみたいだ。
俺や凛に助けを求めるような視線を送って来るが、俺たちは一斉に目を逸らした。
なんて俺は薄情者なんだろう…。
そうは思っているが絶対に安藤先輩と目を合わせようとはしない。
「いやー、斉藤さん?これは俺が自主的に面倒だけどやろっかなー、とか思ってやってるだけだから?その提出遅れなんてことは絶対にないし?その殺される理由ってのにも当てはまらないっていうか…」
「そうですか。嘘吐いたので、半殺しにします」
そう言われてから安藤先輩は必死に逃げようとするが、運動神経抜群の斉藤先輩にすぐに追いつかれてしまい、柔道の寝技を掛けられて、あっという間にダウン。
こりゃあ、おっかねー。
もしあんなことがあったら、嘘は言わないでおこう。
そう心に決めた俺だった。
そんなこんなしているうちに、完全下校時間、3分前になってしまったようだ。
顧問のさーせんが、下校を促しにやってきた。
「あんたたち、さっさと帰りなさい!」
「どうしたんですか?今日はなんだか荒れてますね」
「それ、篠原さんどういうこと?あたしの肌が荒れてるっていうのかしら?いいわね、いいわねー。若い子は。何したって、お肌つるつるでさー?あたしなんて毎日パックしてるのに—!それなのに彼氏に振られたし!」
「あー、なるほど。彼氏に振られて荒れてるんですねー」
凛が何とも勇気のある発言をする。
それを聞いて、さーせんが凛の方を睨む。
「凜くん、ちょっと顔がイケてるからって、調子いいこと言ってんじゃないわよ!さっさと帰れ!」
「え?あ、はい!」
凛は何で怒られなきゃいけないんだ?と顔に書きながらも、先生の命令には従って、星研部室を退室した。
俺たちもそれに続いて次々と部室から追い出されていく。
てか、いつの間に彼氏作ってたんだ?
この数週間の間ってことか。
つまり、1か月も持ってないってことか?
そりゃあ、荒れるわな。
そんなことを思いつつ、靴箱に向かって、靴を履きかえた。
そして、昇降口を出て、門外へと出た。
「ふー、今日もこれで終わりかー!なんだか早いなー!」
「しかももう5月ですよ!」
「そうだなー!って、亮!お前中間のテスト勉強しろよ!」
「わかってますって!ゲームと勉強の比率は8:2から7.5:2.5にしますから!」
「あんまり変わってねーよ!!」
俺たちがそんな会話を繰り広げていると、神谷先輩が一人だけ、昇降口で立ち止まっているのが見えた。
「神谷先輩?」
篠原が門から顔を出して、先輩を呼ぶ。
すると、ようやく自分が皆より遅れを取っているのに気が付いたのか、
「あー、すまない。ぼーっとしていた」
と苦笑いしながらやってきた。
どうかしたのだろうか?
最近ダークな事件ばかりが続いていた所為か思わず緊張してしまう。
だが、その心配は無用だった。
「も、も、も、も、もしかして!!」
「どうした?奈々」
「と、とぼけないでください!その後ろに隠している物を見せてください!美紀ちゃん!それ、ラブレターでしょ!?」
そう言って、神谷先輩を追いかけだす斉藤先輩。
なぜ斉藤先輩はそこまで神谷先輩を男に渡したくないのか?
そりゃあ、麗しい神谷先輩が男と歩いているのはあまり想像したくはないけれど、斉藤先輩にはそこまで関係ないんじゃ…?
そう思って、斉藤先輩の方を見ようと振り向いた瞬間、後ろに手刀を俺に掛けようとしていた斉藤先輩がいた。
ん?後ろに?
「って、え!?なんで!?」
そう言いつつも、手刀を避ける。
「っち。運動神経がいい奴は厄介ですね」
「今舌打ちしましたよね!レディーがそんなことするもんではありません!」
「れーくん、そのキャラやめてください。全身から血の気が引くくらいに気持ち悪いです」
ま、真顔でそう言われるとは…!
俺も予想していなかったぞ?
ていうか、これ、軽いジョークだったんだけど?
「す、すいません。てか、何で俺を気絶させようとしたんですか!?」
「えーっと、何ででしたっけ?」
えー!?
理由もなく人を襲おうとしてたの、この人!?
マジで危ないよ!
この人絶対、将来犯罪犯すって!
「あ、そうだ!思い出しました!れーくんが、美紀ちゃんに対して探りを入れるような視線を送ったので、美紀ちゃんに心配させまいとしようとしてたんでした!」
「そ、そうですか…」
この人の神谷先輩ラブさにはもう敵わない。
法律だって敵わないかもしれん。
「まぁ、そういうわけだから、美紀ちゃんに少しでも疑いを掛けたら、殺しちゃいますよ?」
「…はい、すいませんでした」
ここは素直に謝って置こう。
この人なら本当に犯罪を犯しかけない。
「うん、素直でよろしいですね。それでは帰りましょう」
そう言って、スタスタと歩き始めた斉藤先輩。
神谷先輩は斉藤先輩より少し離れた場所をゆっくりと歩いている。
多分、ラブレターのことで少し喧嘩ムードなのだろう。
なんてしょうもないことで、喧嘩するんだ…。
そう思ったことを生涯口にすることはないだろう。