コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: あの星を探しに。(ラノベ風) ( No.59 )
- 日時: 2012/09/22 12:15
- 名前: リア (ID: SsOklNqw)
「はーはーはー」
俺は慌てて星研部室を飛び出した後、ダッシュで靴箱に向かった。
そして、1年生の靴箱に行き、先に自分の靴を履きかえてからB組の方へと向かった。
「・・・あ。」
俺がそう声を漏らした先には、壁に靠れかかった京香がいたのだ。
「あ、儷くん!」
俺のさっきの声が聞こえたのだろうか。
彼女は嬉しそうにこちらを見ながらそう声を掛ける。
俺はそこで、ぶっきらぼうに
「おう。」
と答えるわけにもいかず、精一杯の笑顔で
「おう。」
と答えた。
すると、またしても彼女は嬉しそうに笑いながら
「ちょっと待ってて。今、靴履き替えるから。」
と言った。
俺は無言で頷き、その様子を眺める。
俺が眺めている間にも彼女は靴箱からローファーを取出し、脱いだ上靴と交換する。
そして、ローファーを地面に置き、それに履き替える。
所要時間、10秒弱というところだろう。
「早いな、履き替えるの。」
「まあね。幼稚園からずっとローファー履いてきたし。」
「・・・ずっと私立だったってことか?」
「うん。」
彼女はそう言うと、少し顔を曇らせた。
悪い思い出でもあるのだろうか。
「私立で、しかもずっと女子校だった。」
彼女は先ほどの曇った表情のまま、素っ気なくそう言い、俺より先に歩き出した。
まるで、過去から逃げるかのように・・・。
「儷くんは男子だから分からないかもしれないけど、女子校ってのは必ずドロドロするの。」
「あー、なんか陰湿ないじめとかそんな感じの?」
「まあ、そんなとこ。でもね、私は幼稚園の頃からそのドロドロな環境下に置かれていたから、こんなものなんだ、って思ってたの。」
「・・・。」
俺は彼女の言葉だけを聞くことにした。
俺が口を挟んだところで、過去はどうにもならないし、それに・・・俺が口を挟んでしまったら、彼女の何かが壊れるような気がしたからだ。
「でも、ある日を境にそんなに簡単に処理できなくなってしまったの。」
「・・・。」
「そのある日ってのは、私の父が経営していた会社が破綻した日のことよ。あれは・・・確か中1の秋ね。」
父が経営って・・・京香はご令嬢だったってわけか。
それにしては喋り口調にお嬢様らしいことはあんまり見当たらないが。
「私は父の経営していた会社が破綻するまでは、いじめられるなんてことはなかった。多分、陰口もそんなになかったはずよ。浅いところでクラスメイトとは付き合ってきたし、そんなに他の人に害を与えるような行為はしなかったもの。勿論、私自身も陰口を叩かなかったしね。」
「・・・。」
「だけど、皆父の会社が破綻した途端に態度が豹変したの。陰口をよく言われるようになったし、いじめにも合った。そう、私のクラスメイトは皆バックにいるものが怖くて、何もできなかっただけなのよ。」
「・・・。」
「でも、そこで転校したら逃げたと思われるじゃない?私、こう見えても負けず嫌いなの。だから、残りの2年ちょっとを耐えた。そして、もうドロドロな目に合わないように共学の公立に入学したの。」
「・・・別に私立でもよかったんじゃねーのか?」
「んー、確かにそうね。でも、私立には私のことを知っている人も多かったし、私立はお金持ちの子が集まるから息苦しいの。だから、公立に来たの。」
「そうか。」
「ここに来て、まだ数週間余りだけど、後悔はしてないわ。こんなに楽しい学校生活は初めてだもの。新鮮なことが色々あるしね。」
「そうか。」
「それに何より・・・」
そう言って、彼女は俺の目の前で足を止めた。
そして、彼女はくるりとこちらを振り返った。
振り返った彼女の頬は紅潮していたように見えたが、何せ日がほとんど沈んでいたため、あまりよくは分からなかった。
しかし、次の彼女の言葉で紅潮していたことが確定した。
「儷くんに会えたよ。」
俺はそう言われた瞬間、少し顔が火照ってしまった。
何度か付き合ったことはあったが、こんなにストレートに言う人はいなかった。
つまり、俺にはまだ経験がなかったのだ。抗体がなかったのだ。
俺はどうすればよいのか戸惑って、あたふたと目を泳がせた。
「えーっと、あーっと・・・俺、どう反応すればいい?」
やっとの思いで出た言葉はそれだった。
彼女は俺のそんな間抜けな質問を聞くと、クスリと笑った。
そして、また俺に背を向けて、歩きだしながら言った。
「さぁ?それは、儷くん自信に聞いてみなよ。」