コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 妖精さんと、まてりある ( No.3 )
- 日時: 2012/09/29 11:30
- 名前: 久遠 (ID: IsQerC0t)
2人「・・・何が起きたんでしょう?」
「よ、妖精、ですか・・・?」
「そうなのだ」
自称・妖精さんを語るこびとさんは自信ありげに胸を張ります。何に自信があるんでしょうか?
「妖精ってあの英語で『feiry』と書く、あの妖精さんですか?」
「ちがうのだ」
「え? 違うって何が・・・」
「『feiry』ではなく『fairy』なのだ」
「あ、そっち」
妖精さんに英語のスペル間違いを指摘されてしまった人間・私はどうすればよいのでしょう? まあ、英語と体育だけはどうも苦手でして・・・
「じゃなくて!」
このちいさな方が妖精さん? 私が想像するのは、背中に羽が生えていて魔法の杖みたいなのを持っているティンカー○ルみたいなのですが・・・
私はふいに偶然(?)持っていた広○苑を開きます。あ、第六版ですよ。
【ようせい<妖精>
西洋の伝説・物語に見える自然物の精霊。美しく親切な女性などの姿をとる。・・・以下略。】
・・・女性、ですか・・・。
ちらりと机の上にいる妖精さんを見ますが、どう見ても美しい女性には見えません。
続いてパソコンでウィキ○ディアを開いて検索。
【妖精
妖精(ようせい、fairy)とは、西洋の伝説・物語などで見られる・・・以下略。中国では、もともと妖怪や魔物を指して使われていた。】
よ、妖怪〜? 魔物〜? とてもそうには見えませんが・・・。
続きを見てみます。
【———妖精は小柄で可愛らしい存在として描写されるが、巨漢であったり天使のように荘厳な存在として描かれることもある。】
・・・ひとまず巨漢ではなかったことに安心感を抱く私。
さて、真下から何かしら行動をしている私、を不思議そうに眺めている妖精さんに声をかけてみます。
「・・・あのぉ」
「はい?」
妖精さんは首を傾げます。
「妖精さんとおっしゃられましたが、なにかできるんですか? こう、杖を振って魔法をかけるー、みたいな・・・」
「・・・・・・・・・」
妖精さんは「何言ってんの、こいつ」みたいな目で私を見ます。
「・・・なんかすみません・・・」
「いえいえ、きにするななのだ」
妖精さんからの、上から目線。真下から言っているのに、上から目線。
ここで私はずっと気になっていたことを口にします。
「あの、その格好は・・・なんなんですか?」
「これはさんたなのだ」
「あ、やっぱり?」
赤いぼうしに、赤い服。やっぱりサンタさんの格好のようでした。
そしてまたもや、疑問を口にしてみます。
「白いおひげは、ないんでしょうか?」
「・・・!!!!!」
忘れていたようです。ええ、すっかりと。
「・・・・・・じかいにごきたいくださいのだ・・・」
すっかりへこんでしまいました。ていうか次回もあるんですか。
「妖精さんはみんなそのような格好を?」
「いえ、ぼくだけなのだ」
「あらま、どうして?」
「こうぷれ、しゅみだから」
こうぷれ・・・・・・あ、コスプレのことですか。ていうか趣味なんですね。
「・・・いまさらですがお名前は?」
「・・・・・・なまえ?」
「そう、名前です」
「なまえ、ないのだ」
「不便ではないですか?」
「ほかにはなすひとがあまりいないもので」
・・・何かを知ってしまったようなこの感覚。妖精さん内のイジメでも起きているんでしょうか。それとも、妖精さんはこの近くでは彼一人だけ?
同情のつもりはありませんが、なんとなく思ってみたのです。
「・・・名前を、つけて差し上げましょうか?」
「どんなの?」
そう言った妖精さんの瞳はキラキラと輝いていました。責任重大です。
「そうですねー。『〜なのだ』とおっしゃってましたから・・・『のださん』?」
「きゃっか」
「ですよねー」
即答でした。
「ではどんな名前がお望みで?」
「・・・ようせいさん」
そのまんまやないかい。
胸の内でひそかにツッコミ。でも、彼が望んでいるのでそう呼んでさしあげます。
「さっきからなに一人でしゃべってんの〜?」
私の幼なじみ。いえ、悪友の夕星良がやってきました。
「悪友とはヒドイな」
「・・・だから勝手に人の心を読まないでください、って前から何度も言ってるじゃないですか」
「はいはい、分かってるよ」
「いいえ、分かっていません」
「・・・、ところで何ブツブツ一人で言ってんの?」
「えっ!?」
まずい。ひじょーにまずいです。もしこんな場面を見られたら・・・
「ぎゃはははははッ! あんたいったい何してんの!? 妖精とか、初等部生かよ!」
と、お腹を抱えて大笑いするでしょうね・・・。
私は、素早く妖精さんを両手で隠します。しかし、
「あれ、今なんか隠したでしょ」
何故かこういうコトだけは彼女は見逃しません。
「見せなさいよ〜」
彼女は強引に私の手をどかそうとしてきます。
「いやですぅー!」と私は頑張って抵抗します。この騒ぎで、クラスの人々の目線が次第に集まってきていました。
しかし、体育会系の彼女の力に負け、両手がどかされてしまいました。
———ああ、時間を巻き戻したい・・・!
私はふと、そう思いました。
声に出したつもりはありませんでした。しかし、下から声が聞こえてきたのです。
そのおねがい、かなえてあげるのだ。
その後の記憶はありません。
ただ、白い光の中に包まれたかと思うと、教室はついさっきの少しガヤガヤとした雰囲気を取り戻していたのでした。
「・・・なにが起きたんでしょう?」
そう呟きながら私は少しの間、呆けていました。
ふと、あの『声』を思い出し、声の主の方を見ました。
するとそこには、
『かなえてあげたよ。ほめてほめて!』
とでも言っているかのように、何かを求めているようなつぶらな瞳が、キラキラと輝いて私を見つめていたのでした。
〆 9月29日