コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 右側の特等席。 ( No.9 )
- 日時: 2012/09/16 18:35
- 名前: ゆえ ◆Stella/Y/Y (ID: F5aTYa7o)
【 プロローグ 】
体が弱いわたし、広瀬 真優。朝に調子よく起きても、学校に着く頃にはふらふら。家から学校までは遠いから、長く歩く。そのためだ。だけど、車で送ってもらおうとは思わない。だって、そしたらまた、皆と違うようになってしまうから。
他の皆は、ずっと授業を受けられて、普通に体育もできて、普通に登下校できて。普通の事が、当たり前なんだ。だけどわたしは違う。普通の事が、普通じゃない。皆と同じことができない。そんなの、やだ。
だけど、辛い目眩には勝てない。今日も、朝学校に来たら直行するのは、下駄箱からすぐ右側の保健室。
「友香、ごめん。今日も———・・・」
「え?・・・ああ、保健室?わかった、ハゲ丸に言っとくわ!」
そう言って、おりゃあああ、と元気よく階段を登っていくのは、わたしの親友の、泉 友香。そしてその後ろにいるのが、友香の双子の弟の、真希くん。わたしとふたりは幼馴染で、昔からずっと一緒に登下校している。そしてハゲ丸と言うのは、うちのクラスの担任だ。
「ありがとう、よろしく」
「うん」
もう姿が見えない友香の代わりに、真希くんに言う。すると真希くんは、ふっと微笑んで、階段を登っていった。
わたしは保健室に向かう。ガラッとドアを開けると、いつも通り白衣を着た先生が、座っていた。
「あら、広瀬さん。おはよう」
「おはようございます」
「体温計かな?はい、どうぞ」
「はい」と答え体温計を受け取る。しばらくするとピピッと鳴ったので取り出すと、37.8とあった。
「あら、微熱ね。少しベッドに横になって」
「すいません・・・」
わたしは、いつも使うベッドへ行く。一番窓際の席で、ここに座ると、窓の外がよく見える。
わたしは横たわって、そっと瞼を閉じる。するとすぐに、眠気が襲ってきた。外からは、グラウンドで駆け回る人たちの声。
わたしだって、駆け回りたい。大声を出したい。普通の高校生らしく過ごしたい。だけど、それは無理だから。それなら、素敵な恋をしてみたい。自慢じゃないけれど、高二にもなって、初恋はまだだ。
今日こそは、素敵な人に出会えるといいな、と淡い期待を持ちながら、ゆっくりと記憶を手放した。