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- Re: 右側の特等席。 ( No.59 )
- 日時: 2012/09/22 12:11
- 名前: ゆえ ◆Stella/Y/Y (ID: 5ylIrv3G)
【 第十五話 】
ふわっと、頬に優しく何かが触れて、撫でられた気がした。
そして、「・・・泣いたのか」と言う、ぶっきらぼうな、でも優しく包んでくれる、低い声。
この声、昨日たくさん聞いたな。・・・でも。
それ以前に。もっと昔に。この優しい手と、もうちょっと高い、でも優しい声。
触れられたこと、ある。聞いたこと、ある。
いつだろう、この手に、この声に、・・・わたし、助けられた・・・?
-
ふっと目が覚める。目覚めたばかりなので、視界がぼんやりとしている。ゆっくり瞬きをすると、ちゃんと見えてきて・・・。
「・・・・・・え?」
「・・・よう、起きたか」
こんの、くん?
だって、夢みたいな光景。願ったどおり、彼はわたしの右側に座っていた。目が合うとにやっと笑われて、ついドキッとしてしまう。
わたしは慌ててベッドに座ろうとしたが、・・・目眩がした。そういえば、体も重い。・・・こりゃ、さっきより熱が上がってるな・・・。
そんなわたしに気がついたのか、今野くんはわたしの肩を押して、寝転がせた。
「ふ、あっ」
いきなりの事でびっくりして、変な声が出てしまう。
「お前、気分悪いんだろ?寝てろよ」
「え、あ。・・・はい、ありがとう・・・」
お言葉に甘えて、ごろんと転がる。そのあいだも彼は、わたしの右側から離れない。よかった、ここにいてくれるんだ、なんて思ったのは、秘密。
「・・・お前、いつも保健室いるの?」
「・・・はい。体、弱いので・・・」
「・・・・・・・・・へえ」
そう言って今野くんは、窓の外を見つめる。少しの間、沈黙。ちょっと気まずい・・・。
その時、予鈴がなった。これは、生徒用。
「じゃあ、俺戻るわ」
「・・・あ、はい・・・」
すっと、ベッドから立ち上がる。座っていたところが温かいけど、またすぐ、きっと冷たくなる。
・・・また、会いたい。
「・・・あの、今野くん」
「・・・ん?」
「ほ、保健室で、待ってます・・・」
勇気を振り絞って、言ってみた。今野くん、どんな反応する?昨日みたいに、また馬鹿にしたみたいに笑う?
そっと俯いてた顔を上げると・・・思いのほか、優しい微笑みが待っていた。
「・・・また、来てやるよ」
そう言って去っていった。