コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 右側の特等席。■コメ100突破■ ( No.109 )
日時: 2012/10/13 18:41
名前: ゆえ ◆Stella/Y/Y (ID: 21zier3A)


【 第三十二話 】





やけくそになって、後に後悔するのは自分自身なんだって、改めて思った。どこかの漫画や小説には、やけくそに可愛い事を言って、相手をメロメロにさせる的な展開が多いけれども。現実ではそんな事全く無くて。だって現に、今わたしの目の前では、不思議そうな、うんざりしたような表情を浮かべた今野くんが居た。

しばらくの沈黙。周りだけの声が、耳につく。だけど、周りは何を話しているのか。わたしの事を言っているのか。今はそんな事気にもしなかった。今頭の中には、この場をどう乗り切ろうか、と言う思想しかなかった。

そして考えた結果、思いついたのは。


———・・・何か適当にごまかして、逃げる。


早くこの場を逃れたいがために、何も考えず言葉を発せようとした時。




「・・・・・・お前、何言ってんの?」




・・・ああ。先手を、取られてしまった。





「あ、あの、自分でも何が何だかわからなくて・・・」
「は?お前はお前だろ。つか、お前が言ったんだろ」





確かにそうですが。でも、自分の意思で此処に来たわけではなくて。・・・・・・まあ、実を言うと。恥ずかしいっちゃ恥ずかしいけれど、会いたいのは本心であって。
会えたから。目の前に、君が現れたから。ついやけくそになって、意味わからない事を言ってしまった。「会いに来た」なんて、何て調子に乗っているんだろうか・・・。




「・・・おい?」




声をかけられ、びくっと肩を震わせる。声色がいつもより低く、機嫌が悪いように思える。
呼ばれてるとわかってはいるのだけれど、何を言われるのか少し怖くて、顔をあげれなかった。




「おい。呼んでんだから、こっち向けよ」




どんどんと、低くなっていく大人っぽい声。怖いけれど、仕方がない。わたしはそっと、うつむかせてた顔をあげる。・・・と。





「・・・お前、可愛いな」




優しく微笑んでいる、今野くんがいた。