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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 右側の特等席。■コメ100突破■ ( No.110 )
- 日時: 2012/10/13 18:54
- 名前: ゆえ ◆Stella/Y/Y (ID: 21zier3A)
【 第三十三話 】
可愛い、だなんて言われるとは、微塵も思っていなかった。そりゃそうだろう。この流れからは、怒られるか引かれるか、・・・嫌われるか。この三つしか、運命はなかったはずなのに。目の前の愛しい彼は、何て言った?「お前、可愛いな」なんて。
こんな虚弱体質で、他の子のように過ごせなくて。誰かに頼ってばっかりで、面白いことも言えなくて。・・・・・・ちゃんと、笑顔でいれなくて。そんなわたしの、どこが可愛い?
「・・・顔、真っ赤」
「・・・っ!」
そっと、綺麗な細い指で、頬を撫でられる。そこの部分だけ、今野くんが触れたところだけ、熱を持った気がした。
「・・・屋上行って、色々話すか?」
「・・・え?」
頬から指が離れる。・・・ちょっと寂しい気もするけど。
・・・それより、屋上って?今?今日?現在?ふたりで行くって事?
ていうか。
「屋上って、立ち入り禁止じゃ・・・」
そう。屋上へと繋がる鉄の扉の前には、立ち入り禁止の札がかかっているはずだ。うちの先生たちは何かとうるさいので、札がかかって以降は、誰も屋上へは入っていないはずだ。・・・多分。
「・・・そうだな。だけど、俺に会いに来たんだろ?何しに来たんだよ」
「そ、れは・・・は、話し、に?」
目的なんか無くて、ただ会いたいから来ただけだけど。それこそ引かれる気がして、咄嗟に嘘をついた。
そんなわたしに気づかず、今野くんは目を細めて、わたしの腕を引いた。多分、屋上へと向かっているんだろう。
「どうせ鍵は開いてんだよ。それに、話に来てくれたんだろ?」
「は、はい・・・」
くるっと今野くんは振り向き、人差し指を口に立てて、言った。
「・・・秘密、な」
そんな妖艶な姿に、彼が前を向いたあともしばらく頬を染めていたのに、気づかれなかっただろうか?
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