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Re: 右側の特等席。■コメ100突破■ ( No.115 )
日時: 2012/10/15 15:39
名前: ゆえ ◆Stella/Y/Y (ID: tHQCwfdH)


【 第三十六話 】




目の前には、紅い海。その中心にいるのは、わたしの母親。そして母親を轢いたトラックの運転手が、わたしのところへやってきた。彼の目には焦りと後悔、そして心配と不安が浮かんでいた。いろいろな感情がごちゃまぜになっていて、何を考えているのかよくわからなかった。まあ、小さいからというのもあるが・・・。


わたしはというと・・・その時は、涙も出なかった。何があったのか理解しきれなくて。でもよくよく考えると、母さんを殺したのはわたしで。トラックの運転手は、きっと何も悪くない。なのに何故、この人が捕まるのだろうか?


首にかけてある名札を見る。「今野 勇」。


・・・え?



こ・・・”今野”・・・?




-




「ん、う・・・」




瞼を開くと、真っ白な壁とさっき先生がしめてくれたカーテン。そして淡い栗色の髪・・・って、え?



「こっ、今野く、わっ」



慌てて起き上がろうとすると、肩を押されて寝かされた。前にもあったな、こう言う事。




「よっ、大丈夫か?」
「あ、はい。だ、大丈夫ですっ・・・」




体は先程よりは軽い。・・・けれど、汗をかいている。今はそれほど暑くないのに。




「お前、うなされてたぞ?何か悪い夢でも見たのか?」
「あ・・・」



そうだ、わたし、夢を見ていた。
あの日の光景。そして・・・・・・。




「あ、あの、今野くん・・・」
「ん?」




聞いてはいけない、そう天の声が聞こえたけれど・・・真実を、知りたかった。
もし、そうだったらどうする?名前も一緒で、犯した罪も一緒で・・・。




「こ、今野くんのお父さん、名前は・・・?」




・・・あぁ、聞いてしまった。
どうか、お願い。想像とは違う答えを言って・・・。

今野くんは驚いたあと、ふっと笑って、答えた。





「・・・今野 勇。・・・人を轢いて、捕まったよ」




・・・目の前が、真っ暗になった気がした。