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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 右側の特等席。■お客様10人突破■ ( No.118 )
- 日時: 2012/10/16 20:53
- 名前: ゆえ ◆Stella/Y/Y (ID: 1v8J9i1X)
【 第三十七話 】
「・・・おい、広瀬?」
いつから呆然としていたのだろうか。数秒か、数分か、数時間か。今野くんが心配そうに眉を下げ、わたしの顔を覗き込んできた。その距離が余りにも近くて、わたしは少し引いてしまう。感じ悪いな、わたし。
「・・・・・・あのさ」
「はっ、はいい!」
いきなり話しかけられ、「い」を多く言ってしまう。今野くんの顔は真剣で、その茶色い瞳に吸い込まれそう。・・・夢の中の運転手も、確か茶色い優しい目だったな。
「お前、何で俺を怖がってんの?」
「へっ!?」
うそ、そう見られてるの!?
わたしは別に、怖くて逃げているんじゃない。恥ずかしくて・・・。
「こっ、怖がってないですっ!」
「おま・・・こんな腰引いてんのに、よく言えるな」
「うひゃあっ!?」
ぐっと腰を引かれ、一気に距離が縮まる。今野くんはいやらしくにやっと笑って、わたしの耳元へ口を近づけてきた。
「俺のこと、好きなんでしょ?・・・翼って呼んでもいいよ」
「・・・っ!?」
そう言われ、ふうっと息をかけられ、離れる。何だなんだ、本当に同い年なんだろうか?この、わたしの目の前でにやにやと笑う、意中の彼は。
「つ、つつつ・・・」
「うん、何?」
「つっ、翼くん!」
いきなり呼び捨てなんてわたしには出来なくて、くんをつける。それでも高鳴る鼓動は止まらない。息をかけられた耳が熱い。きっとわたし、今真っ赤だ。
「くんづけかよ・・・まあいっか」
そう言って、さっきまでの意地悪い笑顔とは変わり、優しく微笑んでわたしを見る。
———ああ。
わたし、もう。
君しか見えない。
第三章 E N D
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