コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 右側の特等席。■お客様10人突破■ ( No.130 )
- 日時: 2012/10/29 18:53
- 名前: ゆえ ◆Stella/Y/Y (ID: ooAC9POX)
【 第四十三話 】
授業のはじまりを告げる鐘が鳴ったけれど、どうせわたしが居なくても誰も不思議に思わないだろうと、屋上でひとりぼーっとしていた。
コンクリートの壁に寄りかかる。それはとても冷たくて、少し駆け足で階段を登ってきたわたしの体の熱をゆっくりと冷ましてくれた。
駄目だ、息切れがする。眩暈も少し。額に手を翳す。大して熱くはないので、多分熱はない。きっといつもの、運動したせいだ。
階段を走って登ってくるのを、運動と言うのかはわからないけど。
"普通"の高校生なら、こんなもんでもきっと息切れなんかしなくて、笑っていられるだろう。
けれどわたしは違う。一階から屋上までの階段の距離だけで、こんなにも苦しんでいる。こんなわたしなんか、何の部活にも入れない。文化部も、きっと体調不良で休んでばっかだろう。
・・・また、後ろ向きな考え。
でもだって、自分の体が好きって思ったことなんて、生まれてこのかた一度もない。
寧ろ思うのは、なんでこんな体なんだろうって。こんな体なら——死んだほうがましだって、そこまで思ったこともある。
それに、わたしにせいで、実の母親をも殺してしまったんだ。
そしたら尚更、なんでわたしは生きているんだろうって。そんな思考になる。
けれど、友香が真希くんが傍に居てくれたおかげで、わたしは高校生まで生きてこれた。
そんな中、翼くんと保健室で出会ったんだ。
彼と出会ってからは、あんなに薄暗い闇がかかっていた人生が、明るくキラキラに輝いていた気がした。
衝撃的な出来事、漫画みたいな出来事も色々あったけれど、翼くんの前では少しでも笑っていられた、・・・笑おうと思えた。
けれど、結局は翼くんにも、大事な大事な女性がいて。
今までわたしに構ってくれたのは——・・・、その人の代わりでしょう?
だって、気づいた。
わたしと転校生——、ちょっと顔が似てる。
あんなにも可愛くは全然ないけど、目の感じとか口のとか、髪型も、色も何もかも違うけど——・・・。
転校生を初めて見たとき、ちょっとビックリした。
——わたしは、代わりだったんでしょう?
逢いたくても、逢えないから。
その人の、代わりをわたしにしたんでしょう?
別にわたしのことなんて、なんとも思ってないんでしょう?
"俺は、本気にはならない。"
今ならその意味が、痛いほど分かる。
——あぁ。
あんなにキラキラだった毎日が。
今はもう、どんより薄暗い。
今の、曇り空みたいに。
頬に落ちてきた雨は、決してわたしの涙なんかじゃない、そう思いたい。