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Re: 右側の特等席。■お客様10人突破■ ( No.132 )
日時: 2012/11/10 10:26
名前: ゆえ ◆Stella/Y/Y (ID: WUM5kxXu)

【 第四十四話 】



* 翼 目線 *




まさかもう一度会えるなんて、微塵にも思っていなかった。

俺がまだ幼い頃、色々あって心に厚い黒い、幕を閉じていた頃。
俺はその頃、誰に何を言われても、何も感じなくて、笑えなくて。
楽しいという感情はもちろん、寂しい、悲しいという感情さえ分からずにいた。
そんな俺の前に現れたのが、今保健室を出て行った、彩奈。
彼女の美貌は今も昔も変わらず、とても・・・可愛かった。
緩くウェーブがかかった茶髪、形がよくて目を奪われる口、真っ直ぐと見詰める大きい目。
つまんない俺の前でも、綺麗に可愛く笑ってくれる彩奈が、



いつの間にか、好きになってたんだ。




-




「あ、チャイム・・・」



キーンコーンカーンコーンと、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。はじまりの鐘が鳴った時から此処にいたから、一時間近く屋上にいた事になる。
そんな長い時間、ひとりでウジウジしてたんだ。


今日は確か五時間授業だったので、荷物を保健室に取りに行く。


・・・まだ、あのふたりがいたらどうしよう?



そう思うと、自然に重くなった体に気づかないふりをして、屋上の重い重い扉を開けて階段を下った。