コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 流 星 恋 愛 。 ( No.153 )
- 日時: 2012/11/14 18:26
- 名前: ゆえ ◆Stella/Y/Y (ID: U2HpTvJX)
【 第五十三話 】
ガラッと、翼くんが勢いよく保健室のドアを開ける。いつも通り薬の匂いがするが、翼くんの言ったとおり笹川先生の姿は無かった。いつもなら、新聞を読んでそこに座っているのに。本当に出張らしい。
「・・・・・・で」
わたしが入ったのを確認すると、翼くんは後ろ手で保健室の鍵を閉めた。
——し・め・た?
・・・はい?
わたしは目線をドアの鍵から前に移すと、いつの間にか翼くんがこちらを見ていた。
その目は、いつもより元気がない気がして。
「・・・俺がどうしてお前を此処に連れてきたか、分かるよな?」
「っ!」
・・・もしかして。
昨日の事、とか?
いや、それはないな・・・。
「多分、お前が今思ってることが当たってると思うけど?」
「えっ、き、昨日のことですか・・・!?」
「それ以外何があんだよ」
「・・・え、えっと・・・」
正直言って——、彩奈ちゃんの事だと思っていた。
「彩奈が会いに来てくれた」
「・・・俺は彩奈の事が好きだ」
「だからもう、俺のことを好きでいるのはやめろ」
——そんなこと、言われるのかと思っていた。
けど、どちらにしろ気まずいのは変わりない。だって昨日わたしは、翼くんの手を振りほどいて、呼ばれたのを無視して逃げたのだから。
まさかわたしの事、呆れて大嫌いになったんじゃ——・・・。
そう思うと、自然に目頭が熱くなる。
駄目だ、泣いちゃ駄目だ・・・。
「何で、逃げたんだよ?」
「・・・へ?」
「何で、泣いてたんだよ?」
「え、えっと・・・その・・・」
予想外のことを言われ、案の定テンパる。
逃げたのは、わたしが弱いから。
泣いたのも、わたしが弱いから。
・・・本気にならない、翼くんの理由がきっぱりと分かったから。
それ以外、理由なんてない。
けれど、言えない。
それを伝えては翼くんを困らせるって、明確だから。
わたしはキュッと唇をつぐむ。
そんなわたしを見て、翼くんはイラついたように舌打ちをし、わたしの手首をギュッと握って壁に押し付ける。
・・・昨日と同じ、痛さ。
「つ、翼くん、痛っ・・・」
「・・・ざけんな」
今まで聞いた中で一番低い声に、びくっと肩を震わせる。
次に何を言われるのか怖くて、涙目で震える。
下を向いていた翼くんが、すっと上を向く。
その顔が、あまりにも寂しそうで。
「・・・何で、答えない?」
——目が、離せない。