コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 流 星 恋 愛 。 ( No.175 )
- 日時: 2012/12/07 18:42
- 名前: 笑苺 ◆Stella/Y/Y (ID: rQkS91wm)
- 参照: 元 ゆ え で す 。
【 第六十五話 】
開いていた窓から、さあっと少し肌寒い風が保健室内に吹く。すると真希くんは、ふっと、ゆっくり目を開いて、わたしの方を見てビックリした顔をした。
そりゃそうだよね、起きたら目の前に人がいたら、わたしだって驚く。
けれど今わたしが驚いているのは、それじゃない。だってわたしは、いつもとは逆の立場にある。
いつもはわたしが、このベッドに横たわって、真希くんたちがわたしを見下ろす。けれど今は違う。わたしが真希くんを見下ろしている。
不謹慎だけど、なんか新鮮。
「なっ、真優・・・!なんっで・・・」
「ごめんね真希くん。驚かして・・・」
けど、わたしも進みたい。
友香だって真希くんだって、進みたいはず。
わたしの立場でこんな偉そうなこと言えるはずないけれど、今わたしが言わないと、変わらない。
「あのね・・・真希くんって、好きな人いるの?」
自分でも驚くくらい、蚊のなくような小さな声。けれど真希くんには聞こえたみたいで、「は?」というような顔をしている。
「っ、聞いちゃったの・・・・・・」
「——・・・。何を?」
——本当は、分かっているんじゃないの?
・・・だって、寂しそうな顔をしている。
「・・・嘘かもしれないけど・・・。
——真希くんが、わたしのことを好きだって」
「〜・・・っ」
わたしがそう言ったとたん、今まで見たことがないまでに顔を赤く染めた真希くん。
——そのあと、ふうっと深い溜息をついて、背もたれにがくっともたれた。
「・・・友香に聞いたの?」
「う、うん」
「・・・はあ、あいつも余計なことばっかするよな・・・」
ポリポリと後頭部をかいたあと、すっと顔を上に向け、わたしのことをじっと見てきた。
恥ずかしい、穴があくまでに見られている。
けど、目がそらせない。
・・・そらしちゃいけない。
「・・・で?」
「え?」
「え?って、俺は真優が好きだよ。
真優の答えは?」
「あっ、え、えっと・・・っ」
すごく軽いけれど、とても大事なことを言われている。
——真希くんの事はもちろん好きだけど、けど・・・。
「・・・好きだよ、好きだけど——・・・。
それは、翼くんを好きという気持ちとは違う」
「・・・・・・」
わたしを見て、黙って話を聞く真希くん。
「だから、・・・・・・ごめんなさい」
「・・・そっか」
真希くんは額に手をあて、ふっと笑った。
そしてニコリと優しく微笑んで、わたしを見た。
「・・・ありがとう、真優。
・・・はっきり、言ってくれて」
「〜っ、こっちこそっ・・・、好きになってくれて、ありがとうっ・・・!」
よかった。これで、進めるよね?
「・・・あ、あのね、真希くん」
「ん?」
ただのおせっかいかもしれない。けれど。
「友香のこと、見てあげて?ちゃんと」
「・・・は?」
「友香ね、最近仲が良い男の子のクラスメートがいるんだよ」
「・・・・・・」
「・・・取られちゃってもいいの?」
「い、いいもなにも、俺と友香は双子・・・」
「双子だろうと、好きになってもいいんじゃないのかな?
好きになるのは、人の自由なんだよ」
「——・・・」
「・・・っじゃ、じゃあ、わたし戻るね!」
本当に、ただのおせっかいだよね。
けど、言いたかったんだ。
わたしは保健室から出ようとする。
「・・・真優!」
「は、はいっ!」
「・・・ありがとな」
「・・・えへへっ」
わたしは笑顔で保健室から出ていく。
その姿を、誰かが見ていたとは知らずに。