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Re:   流  星  恋  愛  。   ( No.176 )
日時: 2012/12/08 18:53
名前: 笑苺 ◆Stella/Y/Y (ID: VqN13fLi)
参照:    元 ゆ え で す 。


【 第六十六話 】




「おい」
「っわ!」



保健室から出てひとりで帰ろうとすると、後ろから声をかけられた。
誰かと思い後ろを振り向くと、そこにはわたしの今一番会いたかった人の姿。



「つっ、翼くん!」
「よお。今帰りか?」
「う、うんっ!」



さりげなくわたしの隣に来てくれる翼くん。
そうだよ、わたし達付き合ってるはずなのに。



「そっか。じゃあ、また明日な」
「えっ・・・・・・」



——何でこんなにも、遠いんだろう?
一緒に帰るか、っていうのを待ってたわたしがバカみたいじゃない。
翼くんがわたしから遠くなっていく。


いいの?これで。
わたしは、このままで——・・・。




「つっ、つばさ、くん!」




——いやだ。




「・・・ん、何?」
「え、いや、あの・・・」



めんどくさそうに後ろを振り向く翼くん。
どうしてそんな顔するの?
翼くんは、わたしのことを好きじゃないの?
涙が溢れてこぼれそうになるけれど、そんなんじゃいつまでたってもこのままだ。
何のためにさっき、真希くんを傷つけたの?
——進むため、でしょ。




「いっ・・・、一緒にかえろ?」
「・・・・・・」




小さな声だけど、きっと翼くんには届いた。・・・届いて欲しい。

途端、はあっと深いため息が聞こえた。ついたのは、翼くん。
もしかして、我儘だから、呆れられちゃった・・・?
恐る恐る俯いていた顔をあげると、




「・・・・・・え?」




顔を赤く染めた翼くんがいた。

額に手を当てて、困った顔をする。
え?え?なんでそんな反応・・・?




「ほんと・・・それ、狙ってんの?」
「えっ?」
「可愛すぎ。反則」
「〜っ!」




ギュッと、苦しいくらい抱きしめられる。
けれど、甘い。
苦しいけれど、苦しくない。なんて矛盾。
こんな甘い優しい苦しみがあったなんて、知らない。
何なら、もっと苦しくてもいい。
だからもっと、強く——・・・。




「翼・・・・・・」




誰かの儚いつぶやきは、風で消されていった。