コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

第三話 時を動かす少年少女 ( No.20 )
日時: 2012/10/07 16:15
名前: にゅるあ ◆6YRzs3gfaA (ID: d.3c/y7H)


「思ったより、記憶取り戻しかけてるみたいだね。神崎君」
透が病院に運ばれた。
病室から出てみればこうなることをわかっていたように、そこには樹がいた。

「私が名前を呼んだから記憶を取り戻しかけて、情報の多さにパンクしたんだろうね」

「へえ? そこまでわかってるんだ」
意外そうな顔に、唯香は少しむっとした。
目の前にいるのは10歳の子供だというのに、樹は唯香を子供扱いしている気がした。

「君、その人を下に見る癖、やめたほうがいいよ」
「あー、うん。それすごいよく言われる。そんなつもりないんだけどねぇ」

「……」
「病室、入ってもいいかな」
「何するつもりなのかな?」
そこでしばらく、何かを考えるように間を置く。

「俺の記憶を神崎君に転送したいんだ」

「……そんなことできるの?」
「実際にやったことはないんだ。自分に転送できるなら、他の人間にもできるかなって」
苦笑しながら、そう言う。『転送』という言葉に、唯香は疑問に思う。

「それって、君の記憶は残るの?」

「んー、やってみないとわからないねえ。残ると思うけどな」
「……楽観的だね」

「俺の心配なんかしていいわけ? もっと他に心配する人がいるんじゃないの?」

「そこは君を信じてるよ」
唯香が妙に確信を持った声で言うので、珍しく樹も戸惑った。
「はー? 君も十分楽観的だと思うけど?」

呆れたような声にそうかもね、と笑う唯香。

病室にいる少年が記憶を取り戻すまで、あと何分か。