コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

第一話 必然的なこの出会いを ( No.4 )
日時: 2012/10/07 16:27
名前: にゅるあ ◆6YRzs3gfaA (ID: d.3c/y7H)

「唯香」
透は、ふと疑問に思ったことを聞くために読書をしている唯香に話しかけた。

「ん、何? 神崎君」
「唯香って、なんで俺のこと苗字で呼ぶんだ?」
素朴な疑問。唯香は読んでいた本を閉じると、こちらを見る。

「なんでって……」
と言ってから、唯香は少し間を置く。
「俺は唯香のこと、名前で読んでるだろ? でも、唯香が俺のこと呼ぶときは、苗字に君付けって」

「んー、なんとなくだよ? 特に深い意味はないし」

「なんとなくなら名前で呼べよ」
と言う透は、顔が少し赤い。
「ははっ! 神崎君、顔赤いよ? 可愛いー……」

「うるっさい! なんか、その呼び方って子供扱いされてる気がする」
「神崎君が子供だから仕方ないじゃん」
と、唯香が言えば、「同い年のくせに」とか「子供じゃない」とか。必死な反論が聞こえてきた。

「同い年、か。まあ、そういうことになるのかな」
「はあ? 何言ってんの。俺も唯香も、同じ15歳だろ」
「……そうだね」
「唯香って時々変なこと言うよなー」

唯香は笑う透を見て、『昔』とその表情を重ねる。
「変わらないな」と思い、懐かしさと同時に、虚しさがこみ上げてくるのを、唯香は感じた。

(透。なんて呼んだら、諦めきれなくなっちゃうからなぁ。

                 あの頃の君を)