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第四話 消えかけの記憶 ( No.47 )
日時: 2012/12/16 11:07
名前: にゅるあ ◆6YRzs3gfaA (ID: pHBCaraS)

「唯香様が倒れた?」
「らしいねぇ。せっかく透君が目を覚ましたのに」

病室の前には、樹と紫苑。そして透がいた。
透は何かをぶつぶつと唱えていて、時折何かに気付いたように目を見開き、苦しそうに頭を抑える。

「まあ、話せるような状態じゃなさそうだけど」

「……一度にたくさんの記憶を取り込んだせいで、頭が追いついていないのでしょう」

無理もないですね、と話しながらも、紫苑は透から『何か』を感じていた。
その『何か』が何なのかは分からなかったが、酷い不安感を感じた気がした。

(そう、これはあの時の……)
頭ではそんな考えが浮かぶというのに、その『あの時』が分からない。
思い出せない、ということなのだろうが、今まで一度だってそんなことはなかった。


『ほら、今日からは俺が   』



「紫苑?」
「ひやっ! は、はい?」
「なんか考え事してた? 話しかけても反応ないからさ」

あと今微妙にキャラ崩壊したね、と言われたので、煩いと返す代わりに上目線で睨んでおく。
せっかく思い出しかけていたというのに。


そこで何気なく、透の唱えていることに耳を傾ける。

「な、んで……願い? クロノキ、ネシスの……唯香は……」

「っ!」
所々聞き取れなかったが、『願い』『クロノキネシス』それだけで十分に思い出せた。


それは、願ってしまった二人の。
気が遠くなるほど昔の話。