コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 臆病な人たちの幸福論 ( No.161 )
日時: 2012/12/20 22:45
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: qgJatE7N)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

     「モテたいんだ」「「「……はあ?」」」



 強い日差しを反射するように、見上げた空は眩しかった。

 何処までも広がる青空と、それを覆う入道雲。その下で暮らしている俺らの世界の気温は、三十四度。


 世の中は夏休み。しかし高校三年生の俺たちは、補習などで休みは潰される。つまり、俺たちが今居るのは教室だ。

 退屈な補習が終わり、待ち遠しかった昼休みが来たので、上田と、クラスメイトの橘と森永と一緒に、昼飯を食べていた。

 で、冒頭に戻るわけである。



「……もう一度いおう。はあ?」

「何をたわけたことをいっている、橘」

「そんなこと考えている暇があったら勉強しようぜー、俺も人のこといえないけど」

「はいいぃぃぃぃ! 全員ふざけるんじゃねえぞぉぉぉぉ!!」



 上から俺、森永、上田の順で発言し、事の発端である橘がシャウトした。ってか、つば飛ばすな。


「……何だよ」

「一番ふざけているのは橘ではないのか」

「二人の意見に賛成。以下同文」



 俺がしらけた目でいい、森永がため息を吐いていい、上田が苦笑いしながらいった。



「じゃあかしいぃ、ボケェ!! それぞれこの橘徹様が徹底的にテメェらを訂正してやる!!」



 ビシィ!! と人差し指を突き出し、前へめり込むような体勢で居る橘。

 あ、今更だが、彼のフルネームは「橘徹(たちばなとおる)」である。



「まず、三也沢!! テメ、自分に彼女が居るからって調子こいてんじゃねえ!」

「いや、調子に乗ってるわけじゃないが……」


 だが橘は、俺の発言には構わず「次ぃ!!」といって、森永のほうへ向いた。

「無駄に熱いな(めんどくせいな)、コイツ」というと、上田から「落ち着け、三也沢……目が死んでるぞ?」といわれた。……そんなに死んでるか、俺。



「次の森永ァ!!」


「何べんいわれなくとも判るのだが」むっすりとした顔で、黙々と食べる森永。

 ちなみに彼のフルネームは、「森永伸太郎(もりながのびたろう)」だ。……冗談だ、名前の読みは「しんたろう」である。

 彼自身をあまりよく知らない人間から(っていうか最近までの俺)は、『ポーカーフェイスの達人』といわれるほど、むっすりと不機嫌そうな顔しかしない。

 だがそれは、残り三秒でぶっ壊れることとなる。



「オレは知ってんだぞ!! テメェがむっつりすけべだってことをよぉ!!」





 ブッハァァァァ!!

 彼は思いっきり、飲んでいた(森●乳業の)牛乳を噴出した。



「なッッ!! ななななにをいっているのだ、橘!」

「どもってんぞー、森永」



 むっつりすけべといわれ図星を突かれたからか、それとも牛乳を噴出して恥ずかしいからか、森永は顔を真っ赤にしながらいった。あ、茶々いれたのは俺だ。


「そう、あれは丁度一年前だった…」


 ドラマの殺人犯が殺人の動機を語るように、橘はカッコつけて、窓枠の上に腕を乗せ、空を見ながら語りだした。


「あ、長く(めんどくさく)なりそうだ」

「落ち着いてくれよ、三也沢。さっきから言葉が二重に聴こえてきてならないんだ」



「とりあえず話だけは聞いてやろうぜ? な?」上田の言葉に免じて、とりあえず橘の話を聞いてやろう。