コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 臆病な人たちの幸福論 ( No.162 )
- 日時: 2012/12/20 22:49
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: qgJatE7N)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「そう、俺と森永は、同じ剣道部の仲間だったんだ——」
「いや、俺も剣道部だったんだけど」と、上田は突っ込んだ。
こっからが長い。もう、長い。
余計なモノが色々ついていたので、要約しよう。
二年の夏、その日は橘は用事があって、部活に少し遅れたらしい。で、一通り顧問に謝り、部室に駆け込むと、後輩を注意している森永の姿が見えたらしい。
……何てこった。七十一文字で説明できたじゃないか。
絶対コイツ、国語の成績悪いな、と思った。
「オレは見た、オレは見たぞ!!」
「家政婦かお前は」
「三也沢……ツッコむ所が斜めってるような……いや、もういいや」
「ええい、話をきけぇ!! 森永!! お前が部室で後輩のエロ本ボッシュートして、スルリとこっそり自分のバックに入れたところを、俺だけはこの目で見たッッ!!」
……と、こういうわけだ。
何か嘘っぽい、と思った。真面目で通っている森永が、そんな事をするとは思えなかったからだ。
だが、森永は昔の少女マンガのような顔で、驚愕した。
「なっ!? 何故貴様がそれを!?」
「本当かようぉい!!」
上田と俺の声がハマる。
まさか長い付き合いである上田も、森永がそんな奴だとは思わなかったのだろう。
人間、中々一目じゃ判らんもんだなぁ。
「……まあ、その話は追々(茶化すために)聞くとして」
「……あー、俺ダメかも。最近幻聴が聴こえるようになってきた」
俺の隣で、シクシクと泣き出す上田。何故彼が泣き出すのだろう。
隣では、羞恥で爆発した森永が突っ伏していた。
「最後。上田には何をいうんだ?」
「おお、そうだった! 上田!!」
「……はい、なんでしょう」
グッタリと疲れた上田が、げんなりとした目で橘を見た。
「テメェに成績のことでいわれたくはないんじゃボケェェェェェ!!」
「ええええええ!? そこぉぉぉぉぉ!?」
その後、上田と橘の最近の小テストの点数が露見され、そのあまりにもな低さに、そこそこ成績が良い俺と森永はビックリしてシャウトしたり、俺と森永の成績と自分たちの成績を勝手に比べて、橘と上田が逆ギレしたりと、もう嵐のような会話が繰り広げられていた。
——のだが。
「男子そこうるせえわ! 静かにメシ食わんかい!!」
クラスの一人の女子の怒声に、とりあえず嵐は収まった。
◆
「……とりあえず、皆落ち着こうぜ」
「いや、一番落ち着いて欲しいのはお前だから」
「あーもー! うっせーな、いいから話戻すぞ!!」
あー、またかよ。
俺の貴重な昼休みが過ぎてゆく……。
「で? モテたいって?」
「そうだろう! 男なら、……いや漢としてぇ!! 一度はモテモテ男になってみてえだろ!」
ニュアンスの違いが判らねえ。
……ってか。
「アホらし」
「!? この後に及んでそれかぁ!?」
「モテモテになって、その後どーするんだよ」
俺が聞くと、橘はフフン、と鼻で笑った。
「それはだな、ハーレム状態を楽しむに決まってるじゃないか。んで、その中から本命を決めるッ」
「で? どうするんだよ」
「……どうするって?」
「本命を決めて、後の女はフるんだろう? それって、凄く残酷なことじゃねーのか」
橘が、グッ、と喉を鳴らす。
「だってそうだろう? ソイツは、本気なんだぞ? 本気で好きになって、本気でお前の優しさを信じている。なのにそれをあっさりフるなんて、その後ソイツはどうなるんだよ。とんでもなく傷ついて、途方に暮れるかもしれない。嫉妬して、ひょっとしたら本命を傷つけるような行為に及ぶかもしれない。
……それに、本命を選んだって、そこに本命が居なければ意味がないじゃないか」
そこまでいうと、三人は神妙な顔をした。