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Re: 臆病な人たちの幸福論 ( No.177 )
日時: 2012/12/27 22:57
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: qgJatE7N)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode


 ……でもまあ、今はいじけている暇はない。



 何せ、高校三年生なのだ。現在のわたしたちは。

 ある人間は大学へ行くために、ある人間は就職するために、夏休みを返上して勉強に勤しむ。

 ……今わたしは、ケンちゃんたちは、大きく変わらなければならない環境に居る。

 何時まで経っても、子供では居られない。
 ケンちゃんたちの成長を、妨げたり足を引っ張ったりしたくない。


 だからわたしは、努力をしなければならない。

 それは、なりたかった自分になる、一歩でもあるから。結果を出すには、努力しなくちゃ。




 シャーペンを手に取り、また問題用紙と向き合う。

 さあて、もう少し、頑張ってみましょうか。




                  ◆



「……い、おーい、諷子さーん?」



 ハッ、と気付くと、ケンちゃんが目の前で手を振って呼んでいた。



「あ、ごめんなさい。何ていってましたか?」

「いや、今の今まで手を止めなかったから……根を詰めるのもいけないし、お茶にしないか、ってダメナコが……」



 そういうと、間髪居れずにカウンター席から、「ダメナコじゃないわ、光田芽衣子よ」と、芽衣子さんの言葉が飛んできた。

 チラ、と時計を見ると、もう既に七時を回ってる。勉強し始めたのが五時の初め頃だから……うわ、もう二時間経っているのか。


「というか、ごめんなさい!! こんなに遅くまでつき合わせちゃって……」


 必死に謝る。本当に、何で気付かなかったのだろうか。

 二人にだって、勉強する時間や自由時間が必要なハズなのに。ケンちゃん……の家は無いだろうけど、雪ちゃんには心配してくれるお父さんが居るのに。お腹空いているはずなのに。

 様々なことが想像できて、とっても申し訳なく感じた。


「あー、大丈夫だ。俺は十時まで平気だし。気にすんな」
「あたしも。今日は遅くなるから自分で作ってって、父さんに伝えておいたから。それよりも一緒にお茶しようよ」



 けれど、二人は案外普通に答えてくれた。

 それがちょっと驚いて、でもすぐ嬉しくなって、思わずクスリ、と笑う。



「わたしも、お茶したいです。お腹が空いちゃったの」









 わたしがいうと、テキパキと机の上は整理された。
 主に働いたのは芽衣子さんだ。



「……司書としての仕事も、それぐらい働いたらいいのに」
「同感だね」
「以下同文」
「ちょっと煩いわよそこな三人」




 わたしの意見に賛成する二人。そして反論する芽衣子さん。

 流れるように菓子を準備し、綺麗な動作で紅茶を注ぐ。もうちょっと早ければコーヒーを注いでいるところですが、わたしはこの時間にカフェインを取ると夜眠れなくなるので、紅茶にしてくれました。

 ……まあ、芽衣子さんは紅茶とは別に、コーヒーも注いでますが。




「……何で紅茶と一緒にコーヒーも注ぐんだよ。太るぞ?」

「今貴方熟女に対してとんでもなくデリカシーのないこといったわねしばくわよ」

「気にしてるなら二つも注がなければいいじゃないですか……」

「雪ちゃん。私はね、コーヒー飲まないと眠れなくなるのよ」

「あれ、逆じゃね?」

「というかそれ、殆ど依存症になってるんじゃ……」





「カフェインを多く摂ると、骨が脆くなりやすいですよ」



「……今いったの、フウか?」



 ケンちゃんに尋ねられる。ですが、わたしじゃないです。

 というか、この声は……。