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Re: 臆病な幽霊少女【泣き虫な文学少年編】 ( No.19 )
日時: 2013/01/26 19:44
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)





 それから少し、俺とフウの距離が縮まった。
 俺から会話を切り出すことも多くなって、会話が盛り上がった。
 授業が終われば、図書室へ直行するほど、楽しみになっていた。

 アイツと贈る日常が、とてもとても楽しいものだと、自覚できるようになっていった。


 でも、俺は、知らなかった。
 アイツが、幽霊だっていうことを。


 ……それに気付いたのは、司書がこの部屋に訪れた時のことだった。
 司書は、まだ家に帰らない俺に、注意してきたんだ。

「もう、下校時間よ。こんな暗いところに一人でいないで、早く帰りなさい」、と。

 ……司書には、フウの姿は見えなかったのだ。
 わけがわからなくて、頭が真っ白になって。
 呆然として、フウの方へ振り向いたとき。



 フウの姿は、消えていた。


                          ◆



 フウが良く、座っていた席をなぞる。
 アイツはここでよく、「シグナルとシグナレス」を読んでは、その面白さを俺に語っていた。
 ……恋愛小説を好まない俺にとっては、少しばかり拷問だったが。
 それでも、アイツが楽しそうな笑顔を見ていると、どうしても聞きたくなった。


 どうして、アイツは消えたのだろう。
 なんて、考えなくても判る。

 ……アイツも、怖かったといっていた。
 嫌われるのが、捨てられるのが怖いと。
 孤独が怖いと。
 だから、俺に嘘をついてまで、笑っていたのだ。

 ……どうして嘘に気付いてやれなかったんだろう。
 もっと早く気付いてやれば、こんなことにはならなかった。
 いや、本当は薄々気付いていた。だって、顔も、学年も、組もわからずじまいだったのだから。
 でも、どうしても怖くて。
 何処まで踏み込んでいいか、判らなくて。
 ……怯えて、結局、『独り』になってしまった。
 そこまで考えが至った時、ポツリ、とフウの席に涙が落ちる。
 嗚咽が、零れる。



 ——あれ、俺。
 泣いてる?


「はは……今頃遅いっての」


 今泣くなんて、遅すぎる。
 今、自分の気持ちに気付くなんて、遅すぎる。
 アイツは、もっともっと苦しんでいたんだ。
 本当は、見抜いて欲しかったんだ。
 その上で、頭を撫でて欲しかったんだ。

 俺は、勝手に好きになって。
 アイツは俺に気付いてくれたのに、俺はアイツを気付いてやれなかった。




                     泣き虫な文学少年は、後悔する




(ごめん、ごめんと)
(何度謝っても、君はもういない)
(せめて、言葉にして伝えたかったよ)

(「好きだ」って)