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- Re: 臆病な人たちの幸福論【2100突破感謝祭更新!!】 ( No.196 )
- 日時: 2013/01/14 23:07
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: qgJatE7N)
間章
苦難はそれを恐れているとつらいものだ。
そして、それに不満ばかり言っていると苦しくなる。
そこから逃げようとすると、追いかけてくる。(ヘルマン・ヘッセ)
あたしには、壁がある。
その原因は、自分にあることぐらい、判っている。
◆
何時からあたしは、不登校になったんだっけ。……確か、あれは中学校一年生の頃だ。
昔からあたしは、人の悪意とかそんなモノを敏感に感じ取りやすく、そして揺さぶれ易い人間だった。
それでも、女一つ手で育ててくれるママを思うと、寂しいと思っても我慢しなくちゃと思ったし、泣いたら困るはずだと思って、どんな時でも泣かないように気をつけていた。
何時しかあたしは、弱音を吐かない、誰かの悪意に翻弄されることもない、何時だって笑ってる、周りの大人の言葉を借りると『良い子』になった。
そんな『良い子』のあたしには、友達が出来た。
大勢の友達が出来た。水面に投げて広がる、波紋のように。あっという間に友達という輪を広げることが出来た。
けれどそれらは、あっという間に広がるものなら、あっという間に消えてしまうものでもあった。
それは、何時だってあたしが、友達との約束を忘れてしまったことが原因だった。
忘れるだけなら友達のままで居られたかもしれない。でも、問題はそこじゃないんだ。
あたしは、約束を破られる方が、当たり前だったんだ。
だから、約束の重みなんて、全然判らなかった。
それを教えてくれる人なんて居なかったし、知ってはいけないものだと思っていたから。
だから、最初は判んなかったから、すぐに謝ることが出来なかったんだ。
そのせいで、あたしの最初の友達からは、あっという間に敵意を向けられることになった。
次からは、とはいえなかったけど、暫くして約束を破ることはいけないことなんだと判った。
だから、破ったときは謝った。必死に謝ったんだ。ごめんなさい、と。必死に、ちゃんと謝ったつもりなんだ。
なのに、それが届くことはなかった。
……何故かって、思い切って聞いた。そしたらその友達は、こういった。
『だってアンタ、謝っているときにヘラヘラ笑っているじゃない』
……あたし、笑ってる?
こっちは申し訳なくて泣きたいぐらいに、必死に謝っているつもりなのに。あたしは、笑っているっていうの?
鏡がないから判らない。けれど皆して、あたしが謝っているときは笑っているというのだ。
……大人だったら、何時も笑っていることを褒めてくれるのに。
それが、小学校に上がって初めて、仇になることを知ったのだ。
「バカ」「死ね」心無い男子の、ちょっとしたからかい言葉でも傷ついてしまう。でも笑う。だから悪口やからかいは止まらない。
それを友達や先生に勇気を出して相談すると、必ず怒られるか、相手にされない。「嘘つき」と、よくいわれる。
あたしは真剣に話しているつもりでも、他人から見ればヘラヘラと笑っているにしか見えないのだ。
どんなに辛くても、笑ってさえ居れば褒められたあたしの『良い子』は。
小学校を卒業した後に、一気に崩壊した。