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Re: 臆病な人たちの幸福論【参照2200突破感謝祭更新!!】 ( No.216 )
日時: 2013/01/21 19:49
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode


                  ◆


 一時限目終了のチャイムが鳴って少しした後、トタトタと走る音が聴こえた。



「(……この足音は、フウだな)」



 俺が足音の正体を確信したその時。



「ケンちゃん、雪ちゃんっ」
「見つけたったい、みやっち、すぎっち!」



 息切れしたフウと、さっき倒れる前のダメナコと同じ顔色をした男が入ってきた。

 俺より少し低い背丈、痩せ型だが身体は俺よりもしっかりしている。黒髪に黒い瞳、俺と違ってたれた愛嬌ある目は、何処か……そう、今はしょげた犬を連想させた。

 彼の名は瀬戸要。つい最近仲良くなった(というか一方的に話しかけられて友達にさせられたとでもいうだろうか。不満はないが)。




「フウ、瀬戸も来たの」

「芽衣子さん、倒れたって本当!?」


 俺の言葉を遮り、すぐさまダメナコの容態を聞くフウ。声は比較的抑えているが、口調はかなり乱れていた。



「あ、ああ。今、そこで寝ている」

「どうして倒れたったい!?」今度は瀬戸がたずねてきた。

「どうしてって……こっちが聞きたいわ。行方不明になった生徒の話をしている最中にぶっ倒れて……」



 そこまで聞いて、俺は気がついた。
 二人の元々悪かった顔色が、更に悪化しているということに。

 行方不明者の話をした後、ダメナコは自分を責めるようなことを呟き、ぶっ倒れた。
 それを聞いたフウたちが、これまでの経緯を聞くと、まるであらかじめ予想していたような様子を見せる。



 ——どうやら、ダメナコもフウも瀬戸も、今回の行方不明事件に関わっているらしい。




「……取り合えず、座れ」




 このまま興奮させれば、ダメナコのようにぶっ倒れてしまうだろう。
 促すと、二人は素直にソファに座った。

 ……が、この後のことを考えていない。



「(ど、どうすりゃいいんだ……!?)」



 俺は焦った。コミュ障の俺は、こういう時の対応がわからない。座らせたところで、二人の顔色が良くならなければ意味がないではないか。

 どうしよう、と悩んでいる間に、杉原が「ちょっと待って」といって、数分後二人分のハーブティを持ってきた。



 ——ハーブティは、眠れなくなったときとか、興奮状態を抑える作用があるのよ。


 ダメナコの、くらだないと思っていた知識が、ここで活用されていた。確かに、ハーブティを飲んだ二人の顔色は、少し良くなった。
 流石だ、杉原。そう感心している反面、俺なんか役立たずだなという重い気持ちが広がった。が、感傷に浸る前に、聞かなければならないことがあった。



「……何があった?」



 俺が聞くと、二人はゆっくり、代わり代わりに説明した。









「行方不明の生徒が上田の妹で、話題の不登校!?」


 俺は驚いて、寝ている人が居るのに上ずった声を出してしまった。


「通りで、一年生に対しての聞き込み調査がないのね……」


 杉原は一人納得する。俺も納得した。本来、行方不明者が出れば友好関係を知るために、まず一年生の奴らが調べられる。けれど、不登校なら少なくとも高校で友好関係など築けるハズがない。
 ……中々、探すのには骨が折れそうだ。