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Re: 臆病な人たちの幸福論【詩をいただきました!(感涙】 ( No.281 )
日時: 2013/02/11 14:59
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode



 昔、とある田舎に、不幸せな少年が居ました。
 親に愛されず、村八分にあい、蔑まれながら生きていた少年でした。
 ある日、少年は考えます。どうして、自分ばかりこんな目に合っているのだろうかと。
 ある日、少年は本を読みます。その本の一文に、こんなことが書かれていました。「今苦しいのは、前世で悪いことをしたからだ」と。
 少年はその言葉を真に受けて、日々の暴力を、何もいわずに耐えていきました。


「これは、罰なのだ」と。
 そう思う事で、何時しか少年は気が楽になっていきました。
 憎むことも、期待することも無い。これはただの「罰」。そう思えるようになっていきました。


 しかし、一向に「罰」は、終わりを見せません。


 少年は、やがて宗教に心をゆだねるようになりました。
 深く、深く。取り憑かれるように。
 罰を終わらせたい一心で、少年は宗教に縋り付きました。

 やがて少年は、宗教の一線を越えてしまいました。
 神の名の下に、人を騙し、殺めていきました。
 けれど少年は、それを悪いことなど思いませんでした。それが、何時しか彼の「生きる道」だったのですから。


 少年は、壊さねばなりませんでした。自分の環境を。
 少年は、壊してはなりませんでした。自分自身を。
 彼には、何が無かったのでしょう? 優しさでしょうか、勇気でしょうか?
 愛情を受けなかった少年が、それらを知ることなど、出来るのでしょうか?
 彼は、周りを壊す勇気が無かった。自分を、守る優しさすらなかった。


 だからこそ、他人を思いやることも、出来ませんでした。



 ある日、少年だった青年は、ある儀式を知ります。
 それは、自殺したモノたちの肉体十三体を贄に捧げることが重要でした。
 さっそく、青年は実行してみます。けれど、一体だけ足りません。
 困った青年は、あることを思いつきます。
 自分の肉体を、捧げればいいのだと。
 そうして青年は、首をつり、自殺を図りました。









「(——ああ……その時に、あたしは立ち会ってしまったんだな)」


 朦朧とする意識の中、流れ込んできた記憶を、ぼんやりと見るような感じであたしは居た。
 ……きっと、この記憶は、あの日首を吊った山田さんだ。



「(じゃあひょっとして、あたしが今まで逃げていたのは……山田さん?)」



 あの時からあたしは、山田さんに追いかけられていたのか。

 そこまで考えが至っても、今出来ることなんて何も無いんだけど。
 動かない分、思考が止まらない。



「(……ずうっとずっと、あたしは山田さんから逃げてたってこと? ……でも)」



 山田さんとあたしは、滑稽なほどよく似てるじゃないか。
 環境や原因が違っても、沢山の人を傷つけて、みっともなく逃げ出して、その上何かに赦されたいとどこかで思っている自分。
 自業自得だと思う反面、助けられたいと思う自分。その癖、様々な人たちの助けの手を振り払った自分。



「(……見事、一致だね)」
 ——ああそうさ、結局はキミも同じ狢の穴なんだよ。



 モヤ——いいや、山田さんが、あたしに語りかけてきた。
 何だ……いうならば、あたしは自分から逃げていたのも同然じゃんか。