コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 臆病な人たちの幸福論【詩をいただきました!(感涙】 ( No.283 )
- 日時: 2013/02/11 16:25
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
『そうだね、お前は知らない。でも、あちらはお前を探している。お前の為に、お前を探している』
「(なにそれ……余計なおせっかい)」
腹立たしくは無かったけど、思わず毒ついてしまう。
なんで、なんで。死のうと思った矢先に。
『なあ、お前はどうしたい?』
なんで、そんなこと、聞くの?
もう、考える力は無い。脱力感に苛まれたあたしには、どうしたいか考えられない。
なのに、どうして。
まだ、希望が残っているような気がするのは、どうして?
「(……あたしが居なくなれば、厄介ごとは凄く減るのに)」
『確かにそうだ。しかし、お前が居なくなることでまた厄介ごとが新たに増えることも事実だ』
「(……直球だね)」
『どうも』
死に際なのに、何だかのんびりしている。
さっきの重たさもなく、心は穏やかだった。気付けば、脱力感も抜けていた。
『……ごめんな、玲』
「(え?)」
『お前を傷つけてしまった原因は、私にもある。それは、謝罪しても償いきれないだろう。でも、だからこそお前は、生きなくちゃダメだ』
どうして、あたしの名前を。
その疑問は、次の言葉によって解消された。
『お前は、ちゃんと殻を割った。傷ついても、傷つけても、それだけの事なんだ。後は、周りがどうにかしてくれるさ』
「(……パパ!?)」
その声が、誰のものか気付いたその時、黒いモヤが、弾き飛ばされるようにあたしから離れた。
——グアアアアアア!?
叫び声を上げるモヤって、おかしいと思う。
変なところで考えちゃうあたしも、無論おかしいんだろうけど。
叫び声で、ギシギシ、と幹が激しく揺れた。
『さあ。今一度、答えてみなさい。玲』
パパがいった。
『本当にお前は、それでいいのかい?』
「(本当、に、なんて……)」
さっきと違って、頭はかなり正常になっているハズだ。
それでも、パパの問いに、答えられない。
『ああ、まだ迷っているのかい? いいや、迷ってるんじゃないね。お前は逃げてるんだ』
「(そ、そんなこと……)」
続く言葉が見つからない。
声に出せば、この状況から逃げれるのに。あたしは、声にすることすら恐怖を感じた。
この言葉を出せば——もう、逃げることは出来ない。
——クソゥ、クソゥ……死ねェェェェエ!!
モヤが、襲い掛かってくる。
けれどあたしは、動こうと思えない。
『……さっきもいったが、大丈夫だ、玲』
パパが力強くいった。
『ほら、お前を助けてくれる人が来るよ』
その時だった。
フワリ、と温かな体温が、冷たくなったあたしの身体を覆ったのは。
「——っ!」
背中に、鈍い痛みが広がる。
今までとは比べ物にならないほど、すっごく身体が重い。
けれど、それすら気にならなかった。
覆ってくれたその人によって、ギリギリモヤをかわすことが出来た。
ズズズ、と引きずる音が響く。多分、背中は擦り傷がついただろう。後からきっと、傷が腫れて悲鳴を上げるに違いない。
でもやっぱり、そんな痛みよりも。