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Re: 臆病な人たちの幸福論【『結局、答えは』更新!】 ( No.287 )
日時: 2013/02/13 15:53
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)

 樹海にたどり着いて、上田の妹を見つけるために捜し歩いていると、引きずるような音が聞こえたので、瀬戸と一緒に慌てて来て見た。
 すると、恐らく上田の妹であろう少女と、それを庇う武田と——凄く気持ち悪いモヤが、くっついていた。
 尋常離れしている光景(といっても、ここ最近こんな感じ)に、慌てふためく俺と瀬戸。しかし、上田の妹が精一杯叫ぶことで、そのモヤは消えていった。

 これが、三也沢健治から見て整理した状況報告だ。以上。





               「……で、結局どうなったんだ?」





 以上——で済ますことはやっぱり出来ず、俺は起き上がった武田と、上田の妹に聞いてみた。
 そこに、こっそり瀬戸が耳打ちする。


「みやっち……まずは、『無事か!?』って聞かんといけんじゃなか?」


 そういやそうだ。


「あ、無事か?」
「あ、はい。僕は無事です」
「あ、あたしも……」


 よし、無事だそうだ。


「で、一体何があったんだ?」
「……あ、えっと……」
「みやっち!」


 瀬戸がまたもや俺を嗜める。


「今まで、玲ちゃんは失踪してたんよ!? しかも、何かキモイ怨霊っぽいのに付き纏われてたし! あんな怖い目におうて、すぐに心の整理がつくハズなか!」
「あ」


 ……そういえば、そうであった。
 コミュニケーションが下手だと、そこまで気が回らない。


「すまん……」
「あ、いえ! 気にしてないんで!!」


 俺が謝ると、上田の妹は手を振った。


「確かに怖かったけど……今はそういう意味じゃなくて、何か物事が急に動き出したような感じだから、言葉に表せられないっていうか……どう説明すれば良いのか、判らないっていうか……ごめんなさい」
「いや、いいんだけど……」


 どうして家を飛び出したんだ?
 何があった?
 何が、どうなっていた?

 聞きたいことは、いくらでもあった。
 でも、今は。どれも相応しい言葉ではないな、と思い直した。
 当事者じゃない俺は、真っ先に聞ける立場でもない。そうなろうとも思わない。
 好奇心で聞くなら、後でもいいと思った。


「……ちょっと、俺らは連絡してくるよ。お前が見つかったって。瀬戸、ついてきてくれるか?」
「あ、うん」


 立膝をして、よっこらせ、と立ち上がる俺は、幾分か精神がオッサンっぽくなっているかもしれない。まあ、それはどうでもいいんだが。


「それじゃ武田、上田妹を任せるぞ」
「え……あ、いや、はい」


 武田は幾分困惑していたが、ぶっちゃけ返事をしてなくても俺らはそのまま立ち去るつもりだった。
 俺と瀬戸は目配せして、さっさと樹海から出た。


                      ◆


 あんなに会いたかった、武田君に会うことが出来た。
 だから、今ここで、ちゃんと武田君に話すべきだろう。
 多分、あの人たちは気を回して、わざわざあたしたちを二人っきりにしてくれたんだし。
 謝罪のこと、今までのこと、これからのことを。
 ……なんだけど。


「……」
「……えっと」


 ちょっと待って。本当に、何があったっけ。
 色んなことがあったような気がするから、ちょっと頭の中を整理させてみる。
 えっと……まず、山田さんが、自殺を図って? たまたま麦藁帽子が、山田さんの遺体の近くに飛ばされて? で、約束破ったあたしが彼と鉢合わせして……。

 ……一体何処から話せばいいのかな?
 本気で頭がこんがらがってきた。


「(——あ、そうだ!! 謝らなくちゃ!!)」


 それが第一目的だったはず!
 そうだ、そういやまだちゃんと武田君に謝っていなかった!!
 そう思い、改めてあたしは正座して、彼に謝ろうとしたその時だった。


「……三浦さん」
「え!? あ、はい!」


 彼が先に、声を掛けてきた。
 まさか彼が声を掛けてくれるとは思わなかったので、あたしは驚く。
 彼は、やっぱり無表情のまま、あたしにこういった。


「ちょっと……ついてきてくれませんか?」








 武田君の意図がわからないまま、あたしはついてくる。
 何をいわれるんだろう。何処へ行くんだろう。
 判らない。恐怖と不安に負けそうで、あたしはそれを振り払うように、足元にあった枯葉に力強く踏み出す。ガサ、という音が聴こえる度に、大丈夫、大丈夫と自我を強く保つことが出来た。
 歩くこと数分。暗い樹海から抜け出すと、太陽の光が目に焼きついた。
 眩しくて、思わず目を閉じる。中々焼き付けて離れない残像をどうにか取り除いて、ゆっくりと目を開けたあたしは、声を上げた。


「あ……」


 辿りついたのは樹海の傍にある大きな木。そう。ここで、あたしたちは会った。


「変わってないでしょう?」
「……うん」


 武田君の言葉に、あたしは同意する。


「もう……二年も経つんだね」
「そうですね」


 あたしが感慨深くいうと、武田君はやっぱり、淡々とした口調でいった。
 それっきりで、会話は途切れてしまう。


「(武田君の気持ちは、声や表情では少し判りにくい)」


 怒っているかもしれない。あたしはそう思った。
 ……今いえば、武田君は怒るだろうか。

 でも。


「……約束、破ってごめんなさい」


 いわなくてはいけないと、思うから。


「どんなにいっても、言い訳になっちゃうよね。だから、弁解はしないよ。でもあたしは、赦されるまで謝らなくちゃならないと思うから。だから……」


 ごめんなさい、ごめんなさいと。
 何の解決にもなっていないかもしれない。いいながら、あたしは思った。
 だってこれじゃ、何処に反省点を置いているのか、相手に伝わらないだろう。
 でも、不器用なあたしじゃ、これ以上のことは思い浮かばないんだ。
 ごめんなさいと、いい続けるしか。
 それを責められる覚悟で、いい続けるしか。


「……もし、赦してくれるなら」


 武田君の表情は、良く判らない。
 でも、謝ることと同時に、あたしは伝えたいことがあった。