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Re: 臆病な人たちの幸福論【第四部更新スタート!】 ( No.319 )
日時: 2013/02/27 21:48
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)


                     ◆



 ダメナコと耕介さんが帰ってきたのは、午後五時だった。
 ちなみに俺とフウは、大輝と一緒にババ抜きをしていた。



「ただいまー」
「あ、お帰りなさいメイコちゃん、コウスケクン!!」



 早速、柊子さんがパタパタと向かいに来る。
 俺たちはダメナコが驚く様子を見るたびに、気配を押し殺した。


「ん? 誰か来たの?」


 唯一誰が来たのか判らない大輝に、し、と人差し指を口元に立てるフウ。
 その様子に、大輝は黙ってくれた。


「どうしたの、柊子さん。嬉しそうに」
「ふふーん。いいからいいから、応接間に行こうよ早く! ほら、コウスケクンも!!」
「え、な、何? 何かあるの?」


 徐々に声が近づいてくる。
 トタトタトタ、と三人の足音も大きくなっていった。それを聞くたびに、ババ抜きの様子を隣で見ていた虎太郎が破顔する。
 ガチャリ、とドアが開かれた時、来た! と思った。




「もう、何よいった……」




 そういったとき、ダメナコが少し瞳を開いた。
 予想通りの態度に、俺は心の中でガッツポーズをとる。
 大輝の様子も見たくて、隣を見ると、大輝が硬直していた。

 が、すぐに二人は次の行動を取る。



「お……お母さん!!」


 大きな瞳を輝かせた大輝が、トランプを置いてダメナコに駆け寄った。


「お母さん!」



 トタトタ。


 嬉しさのあまり、大輝が、ダメナコに抱きつく。



「——やっと、来てくれたんだね!!」





 トタトタ。
 ダッ。







「……え?」


 声を上げたのは、フウだった。


 大輝はダメナコに抱きついた。——だが、スルリ、と、大輝はダメナコの身体をすり抜けた。



 ドタン、と床と盛大にぶつかった大輝。
 一瞬、俺は目を疑う。


「(今、一体何があった?)」


 大輝も驚いたようで、暫くその倒れた体勢でいた。

 俺は、今さっきの現状がすぐに受け容れず、頭の中を整理しようとした。
 が、その前に、ダメナコの言葉で、全て理解してしまう。



 ダメナコは安堵したような、ガッカリしたような表情でこういった。












「……なーんだ。何か凄いのがあるのかと思ったら、諷ちゃんと三也沢君じゃない」






 ……その言葉で凍ってしまったのは、俺だけじゃないだろう。
 そして、予想していた期待を裏切られたのも、俺だけじゃないはず。




 嫌な予感は、何時だって当たるもんだ。


             【続く】