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- Re: 臆病な人たちの幸福論【ダメナコルート完結!】 ( No.335 )
- 日時: 2013/03/20 22:49
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
- 参照: ちょっと>
【あの日を誇れるように ぱーとわん】
あたし杉原雪は、お盆とはいえ里帰りすることも墓参りすることもなく、けれど折角の休みなので、何時ものメンバーである今井萌と佐藤佐奈と一緒に、街を歩いていた。
別に何処かへ行く予定もなく、ただブラブラと歩いていただけなんだけどね。お盆とはいえ、ショッピングセンターは結構込んでいた。クーラーついていたのに暑かったよ。
「美味しかったねー、パフェ」
のほほんとした、佐藤がのほほんと答える。それに今井が、「アンタは味覚の批評甘すぎ。食えないわけじゃないけど、フルーツと生クリームの味がちぐはぐだったよ」と、呆れたようにいった。
この会話を聞けば判ると思うけど、佐藤と今井の性格は全く持って正反対だ。佐藤はふんわりとしたイメージだが、今井は棘がある雰囲気を持つ。評価も佐藤は甘口で、今井は辛口も辛口だ。後今井の方が変態度が高い。佐藤はどちらかというと優等生だけど、今井は元ヤンだったりする。こんなに正反対なのに、小学校からの付き合いというのだから驚く。
驚いたというのは、今井とは最近までうわべでしか付き合ってないから、あたしは佐藤のことを知らなかったのだ。
フウちゃんが目覚めて、まだ一年も経っていないというのに、こんな時間が、もう随分経っているのだと錯覚させられる。
フウちゃんのことがきっかけで、あたしは今井や佐藤と買い物に行く仲までにはなったんだけれど、いまいち信じられない。
いや、本人たちに疑心を抱いてるわけじゃなくて、このシュチュエーション自体が信じられない。
あたしは、友達なんて存在、信じなかった。ついでに、恋という存在も。
そのはずなのに、流れに流され、予想外の現在に至っている。
「(本当に、何がどうなってこうなった……)」
凄く不思議でたまらないのだが、それに居心地の悪さは感じなかった。
寧ろ、ガラにもなく、この時間が続けばいいのにとも思う。
なんて二人にいったら、「キモ!」「……せめてポーカーフェイスを崩そうか、雪ちゃん」と突っ込まれた。
いや本当に、心の底から願っているのよ、これでも。
昔は非凡に憧れながらも、今はこの平凡が大好きで。この平凡を手に入れられたのは……まさしく、三也沢君のお陰だった。
ああもう、やっと忘れられたと思ったのに。
「(……三也沢君、そういえばフウちゃんと一緒にお盆を過ごすことになったんだっけ)」
何気なく、恐らくあたしが三也沢君に向けている恋心なんて気付いていないだろうフウちゃん(だってあの子、本当に鈍いもの)が、無邪気に笑いながらそういったことを思い出す。
……実は、今回ショッピングセンターに遊びにいったのは、それを聞いて意外とショックを受けているあたしを励ます為に、二人が提案したのだ。
二人の誘いに乗らなかったら、あたしは今井に絵を破られたみたいに、ショックでお盆中部屋でへたれこんでいたかもしれない。
未だに痛みとだるさが残っているが、それでも二人のお陰で、幾分か薄れたと思う。