コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 臆病な人たちの幸福論【ダメナコルート完結!】 ( No.336 )
日時: 2013/03/20 23:02
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)



 ——想うってことは、そんなに虚しいこと?
 今日で何回、心の中で問うただろうか。


 人を心の底から、初めて好きになれた。その初めてを手に入れて、あたしは幸せを手に入れることが出来た。

 ……叶わない、恋だと知ってしまっても。

 この二人は、あたしの想い人を知っている。そしてその想い人に恋人が居ると知っていても、二人は反対しなかった。
「フウちゃんも応援してるけど、アンタも応援してる」「だから正々堂々と挑めばいいよ!」二人の嬉しい励ましが、何度も頭に響く。

 あたしは、三也沢君が好きだ。でも、フウちゃんも好きなんだ。
 そんな二人の幸せを壊していいのか、あたしは怖かった。元々、自分の気持ちを告げる気なんてなかったけれど、でもそうする分、あたしの中で爆発しそうな想いが膨れ上がってくる。
 想うだけで幸せなんだ。想い返されなくても、あたしの中に三也沢君が居るというだけで、胸が熱くなる。でもそれは、フウちゃんの笑顔で、罪悪感へと変わる。

 あの人には、あの子が居て。あの子には、あの人が居る。
 互いに想いあって、救われて、救いあって、そんな羨ましい関係。あたしは確かに二人に救われたけど、あたしは二人を救っていない。助けられてない。
 その中に、あたしが勝手に割り込んでいいのだろうか?

 あたしは、確かにこのままで十分。だからこそ、この想いは、自分勝手すぎると思うんだ。自分勝手だから、二人を傷つけてしまうんじゃないかって……ネガティブ思考が止まらない。

 だから、この二人が居てくれて、本当に良かった。
 口ではかなり恥ずかしくていえないけれど、本当に良かったって思えるんだ。

 ……でも、あの励ましの言葉は、嬉しい反面、とても辛く、重くのしかかった。



 あたしは、知ってしまっているんだ。
 この恋が、本当の意味で叶わないということ。叶えないということ。叶えてはいけないということ。
 誰がいったかよりも、あたしがこの想いを断ち切らなきゃ、皆が不幸になってしまうかもしれないということ。


「(ああもうなんで、こんなに余計に考えてしまうの?)」


 二年前もそうだ。三也沢君の優しさに甘えて、しかも三也沢君が暗くなり始めたら、人目を気にして、見捨てるように避けた。自分の気持ちに嘘をついた。思い出すだけで、羞恥と後悔に駆られる。

 臆病なくせに、諦めれない。
 自分勝手なくせに、わが道を突き進むこともしない。
 小さなことで舞い上がったり、感傷的になったり、そんなことの繰り返しは、捨てたくなる。捨てたくなるくせに、手放すことは出来ないのだ。
 なんてバカなんだろう。

 あたしの想いなんてちっぽけなことぐらい、自分自身が痛いほど判っているのに。
 人工的に作られた建物よりも高いところにある青空は、あたしを見下すように、佇んでいるようだった。
















 ……って、シリアスに締めくくったのはいいんだけど。


「次どこいくー?」
「そうだな……」
「え、まだ行くつもりなの」
「当たり前」


 マジですか。
 今は感傷に浸る前に、疲れた身体を叱咤して動かさなければ、と思った。
 それに、あまり暗いこと、今は考えない方がいいかもしれない。考えても、どうせ良い案も気晴らしも出来ないのだから。
 少しため息をついて、そしてうっすらと笑う。
 こんな気持ちを抱えていても、二人は判らない様で気付いているのかもしれない。