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Re: 臆病な人たちの幸福論【『ぱーとつー』更新!】 ( No.353 )
日時: 2013/04/03 18:49
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)

 最近、いじめのニュースを良く見るようになった。
「いじめを苦に自殺」「学校はいじめを認めず」そんなテロップばかり。
 そして、「いじめる側が悪い」「いじめられる側が悪い」「学校が悪い」「保護者が悪い」と、責任を求めるような声ばかりが続く。
 でもそれは、自殺したお母さんやお父さんたちの声じゃなくて、アナウンサーやジャーナリストの声なんだ。
 それを見る度に、あたしは吐き気がする。腹が立つ意味じゃなくて、本当に気分が悪くなる。


 どうして、あんな酷いことばかりいえるのだろうと。
「もっと親が対応しなければ」「学校がしっかりしてないから」「いじめる子は最低」「いじめられる子にも原因はある」とか。
 何も知らないのに、何故ああも人を責めることが出来るのだろう。
 あの人たちは、その人たちには何もされてないのに、どうして責任を求めるのだろうか?
 相手がどう思うかも考えず、無責任なことばかりいって、満足して。
 そうやって居る人も、いじめと変わらないんじゃないだろうか。


 でも、あの人たちは、悪びれず、正しいことをしたという顔で居る。


 あたしには出来ない。
 臆病なあたしには、あんなこと、平気でいえない。

 無責任にいう人と、何もいえないあたし、どっちが悪いのだろう?
 まあ、多数決だったらきっと——あたしの方が悪いと決められるんだろうけれど。
 だって、自分でも思うもの。何も出来ないでいるより、何かやったほうがいいことぐらい。




            【あの日を誇れるように ぱーとすりー】


 暫くして、今井が降りてきた。
 そしてそれとほぼ同時に、おばさんも帰ってきた。


「料理、手伝わなくていいから、雪ちゃんたちと遊んでなさい」とおばさんは笑った。
「うん」今井はそういって、静かに頷いた。


 たったそれだけの会話なのに、あたしは、どうしても、
 二人の背景が、灰色に見えて、無性に寂しかった。


                 ◆


「……アンタ、話したろ」


 ポツリ、と今井がいった。それはあたしに向けてではなく、佐藤に向けた言葉だった。


「まあ、話したよ」
「……勝手に話すんじゃねえよ」
「でも、雪ちゃんに知ってほしくないことじゃないでしょう?」


 肩をすくめる佐藤に、うるさいな、と小さく今井は呟いた。
 でもその言葉の反面、緊張していた表情は少し緩んでいた。
 その様子に、あたしは、自分でも気づいていなかった緊張を緩めることが出来た。


「それに……自分から話すの、難しいでしょ? ただでさえ、萌ちゃん落ち込んでいるし」
「…………」
「萌ちゃん、泣くこと凄く嫌うもんね」
「五月蝿いなあ!」


 ペシ、と怒った今井が叩く。けれど、佐藤はケラケラと笑っていた。


「……話したいなら、話していいんじゃない? 雪ちゃんに」
「……」


 佐藤の意味深な言葉に、今井はあたしの方を見た。
 何かに、怯えているような目で、それが放って置けなくて、あたしは何も考えずにこういった。

 いってしまった。



「別に、いいたいならいっていいわよ」


 そういったら、今井は少し口を結んで、かと思いきや、ゆっくりと、話し出した。