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- Re: 臆病な人たちの幸福論【『第三部の後日談』更新】 ( No.369 )
- 日時: 2013/04/26 21:33
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
- 参照: 嬉しいんだけど皆杉原ちゃんの設定に突っ込んでくれない(泣
昔から、疑り深い、融通の利かない性格だっていうことは自覚している。
だからこの言葉の意味が、ひょっとしたら嫌われたものじゃないかと、馬鹿みたいに考えた。
けれど、彼女はそういうことをいいつつも、笑ったままだ。
軽口や冗談ばかりいっている奴は嫌いだ。
何処までが境界線なのか、判っていない奴なのか、それとも判っててやっている奴なのか、判らないからだ。
そして、どちらも性質が悪い。前者は、他人の境界線が判らないだけではなく、自分の境界線すら判ってなくて、いきなりキレたりするから。
そしてきっと、彼女は前者なのだろう。
自分が怒っているのか、嫌なのか、心の中でも整理がつかない。
だから、自分がどんな顔をしているのかも、判らない。
だから、笑う。
でも、そんな彼女は、嫌いじゃない。
そこまで思考が至って、僕は軽く、はいはい、と返す。
皮肉をいっているつもりじゃないのだけど、そういう態度でよく嫌われる僕。そして、嫌なことは嫌、とはっきりいえない玲。
今だってこういう風に、思わず傷つけたり傷ついたりするけれど。
いい過ぎた時、玲はみっともなく泣くし。かといって、遠慮すれば怒るし。
何処までがいいのか、境界線が判らないし、バランスが上手くとれないし、毎日命の危険性はあるし、疲れるし。
ひょっとしたら、僕と彼女の性格上、悩みを打ち明けるとか、喧嘩せずにとか、そういうことは出来ないのかもしれない。
でも、楽しいから。
「……ご飯食べ終わったら、少し外へ出てみましょうか」
「! いいの!?」
嬉しそうに、彼女は聞く。
「ええ」
それは、とても曖昧で、透明なものだけど。
ああ、これでいいんだと、思えることができるから。
グゥウ、とお腹の音がなった。どうやら、彼女の限界が本当に来たらしい。
「う……何だか少し恥ずかしい」
「はいはい。じゃ、食べましょうか」
「うん……いっただきまーす!!」
「いただきます」
手を合わせてから、弁当箱のフタを開ける。周りに居る人たちは皆開けてからするらしいが、僕と、何故か彼女だけは、フタを開ける前に行っていた。
開けてみると、そこには店のものと遜色ないおかずとご飯が。いや、店のものよりも美味しそうだ。息子の贔屓目を取り除いても、我が母の手の込みようは凄いと思う。
「うわ、美味しそう……これ本当に晩御飯の残りでできてるの!?」
「ええ、一応。最初から作っているものとか、漬物は前からのモノですけど」
「すごーい!! ね、そのドレッシングがかかった奴、頂いていい!?」
「——いいですけど、自分のご飯を食べてくださいよ。前貴女、僕の弁当ばっか食べて自分が作った弁当を捨ててしまったじゃないですか」
「う……気をつけます」
思い出したのでしょう。恥ずかしげに、彼女は頬を染めて、ゆっくりとおかずに手を伸ばした。