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- Re: 臆病な人たちの幸福論【『第三部の後日談』更新】 ( No.370 )
- 日時: 2013/04/26 21:36
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
- 参照: 嬉しいんだけど皆杉原ちゃんの設定に突っ込んでくれない(泣
……その時、また、お腹の音が激しくなる。
さっきより、大きな音だった。
沈黙が流れる。
ハア、と僕はため息をつく。
「……玲。そんなに早く空いてるのなら早く食べなさい」
「違うよ!?」
バン!! と、玲が机を叩いた。振動が伝わり、弁当箱が見事に浮く。が、中身はひっくり返らなかった。
「今の私の音じゃないよ! というか上から聞こえたでしょ!?」
「……え」
その事実にビックリする、と同時に。
グルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
……間違いなく、天井から聴こえてくる。
「……し、静雄君」
震えた声で、彼女は僕を見た。……ええ、判ってますとも。
たった今、この学校に居るのは、僕と彼女だけ。ということは、助けを求めることはできない。
だが、僕は剣道部だ。
「しかもたまたま、手元に竹刀置いてるので」
離れてください、と僕がいうと、「よ、よろしくお願いします!!」といって、彼女は離れる。
——だが、それは、遅かった。
僕が竹刀で天井をつつく前に、ボキ、と何か折れる音がした。
そして、バキバキバキ、と板が割れるような音がした。
「え……て、きゃあああああああ!!」
「う、うわああああああああ落ちるぅぅぅぅぅ!!」
彼女と、僕ではない男の叫び声が、古本が沢山並べられている図書室に吸い込まれる。
更に、弁当の上に——板や埃など、恐らく天井裏のモノと思われるものが、あるモノと一緒に落ちてきた。
そう。
なぜか、茶色の忍び装束を着た、体格の良い男子高校生が、
弁当の上に、振ってきた。
「…………」
「…………」
沈黙が、続く。
「……ねえ、静雄君。これって、あれだよね。時代劇に出てくる、忍者の忍び装束だよね……?」
「ええ……多分、事実だけを見れば、そうなんでしょう」
戸惑いながらも、僕と彼女は視線を交わし、話し合う。
そして——とりあえず。
「何で忍者がお盆に高校の図書室の天井裏から抜け落ちて降ってくるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「訳がわからないですというかこのご時勢にこんな判りやすい忍者が居るのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
僕たちのツッコミは、青い青い空へ、吸い込まれていく。
……まあ、何がいいたいかというと。
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその一」
(朝はシスコン野郎との命の取り合い、それが終われば珍問珍答との戦い)
(そして……現れた忍者っぽいのは、僕たちの弁当を台無しにしてくれた)
(今年のお盆は、ご先祖にお参りしていこう。そう心に誓った)