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- Re: 臆病な人たちの幸福論【『静雄のダメな夏休み』更新スタート!】 ( No.385 )
- 日時: 2013/05/16 17:48
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
そしてとっても気まずい顔をして、なにやら思考を巡らせてから、棒読みでこういった。
「……ココハドコ? ワタシハダレ?」
「なめてんのかテメェェェェェェ!!」
「んなもんこっちが聞きたいわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
状況を判っていながら無理やりボケたので、ぶち切れる寸前だった僕らは構わず忍者にけりを入れた。
「折角ぅぅぅぅ!! 折角母さんがわざわざ早起きまでして作った弁当をぉぉおぉぉ!!」
「頑張った!! 私だって頑張ったんですよ!? 沢山沢山勉強した!!! なのに、どうしてぇ!! どうして弁当台無しにしてくれたんですかぁぁぁぁ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!! 止めて!! ケツに蹴りは止めて!! 痔になる!! ウ●コ出来なくなるから止めてェェェェェ!!」
「食事にんな不衛生な言葉呟くんじゃねえよバッカヤロォォォォォ!!」
「や、止めて本当に!! 弁当を台無しにしたことは謝りますから!! ちょ、掘らないでお嫁にいけなくな——」
◆
とあるコンビニにて。
特に予定の無い男子高校生三人組は、コンビニの前でアイスを食べていた。
「……」
「……おい、上田? アイス零してるぞ? おーい」
「……」
「……何『クワッ!』と目を開けているのだよ、上田」
「……妹が」
「妹が?」
「……」
「上田?」
「妹が……天使の妹(マイエンジェルシスター)が……悪の道に走って堕天しようとしてるッ……!!」
そういって、彼はアイスを放り投げ(というかぶん投げて)、一目散に走った。
『……————後に、男子高校生Tはこう答える。
目に留まらぬ、足の踏み出しと腕の振り方。
低く構える、上半身。
機関車の如く走り出す彼の顔は、笑って……いた。
「ええ、それはもう、極上の笑みでしたよ……。ノーマルな僕らには到底理解も出来ない、笑い顔でした」
「あれは人間ではありません」友人と思えないセリフをぼやくTは、こういった。
「あの笑みは……まさしく、魔王でした」』
……と、頭の中にインタビュー形式の妄想が流れたが、橘はすぐさまハッと我にかえった。
「……ってボーっとしてないで追いかけないと!! 森永、追いかけるぞ!!」
「え、ちょ待つのだよ!! まだ限定のアイスが食べ終わってない——って早ッ!! 少し落ち着くのだよ——」
落ち着くのだよ、といいつつ、実は一番テンパっている彼に、ねえ、と後ろから、肩に手が置かれた。
彼は振り向いた。そこには、頭のてっぺんにアイスをつけた女性が、恐ろしい笑みで佇んでいた。
「これ飛ばしたの、君でしょ?」
どうやら、上田が放り投げたアイスが、女性の頭に乗っかったようだ。
なので、彼は必死に弁明しようとする。が。
「え、いや、それは友人が——」
「御託は結構。で……」
にこやかに笑みを浮かべる女性は、更にいう。
森永伸太郎は、いやな予感しかしなかった。
真夏日の昼なのに、背中には冷や汗しか流れない。
すう、と女性は息を吸い込んで、般若の形相に変わった。
「どーしてくれるんじゃこのボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
——この後、森永がどうなったのか、知る人はいない。
ただ、この後この暑さを冷やそうとする人たちの視聴率を取ろうとする、怪談の企画を持った番組が放送される。
その怪談の中の一つに、こんな話がある。
『あるコンビニの前でアイスを食べると、アイスを憎む鬼女が、アイスを食べる人たちを襲う』、と——。