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- Re: 臆病な人たちの幸福論【『5000突破ありがとう!!』更新!】 ( No.394 )
- 日時: 2013/06/01 17:01
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
「おー、いい食べっぷりだねぇ」
彼の食いっぷりが気に入ったのか、バイトの日比谷さんがどんどんお肉を焼いてくる。
ジュー、という音と、焦げた匂いが漂ってきて、ふと思い出したのは『焦げた肉は発ガン性物質』という知識。
けれど、空気を読んでそれは口に出さないことにした。
「……というか、千歳さんは? 料理と聞いてあの人が黙ってるわけありませんよね?」
何時もなら、忙しくも焦らず大量に繊細に料理をするオーナー(本名大八木千歳)が居ない。
「ああ、オーナーは休み。要坊と長崎に遊びに行ってるよ」
「瀬戸先輩と?」
隣で「意外」と呟く彼女に、そういや教えていなかったな、と僕は思った。
「千歳さんと瀬戸先輩って、実は同じ孤児院出身らしいですよ」
「へえ——……ってぇえええええええええええ!?」
「あ、ちなみに俺も同じくー」
「更にえぇぇぇぇぇえぇえ!?」
へらっとさらっとついでにいう日比谷さんに、ついにポロ、と彼女が肉を落とした。
「はしたないですよ、玲」
「いや、これは驚いちゃっただけだから!! あと『ついに』ってなに!? 既に予想していたってこと!?」
「五月蝿いですよつば飛んでる」
「……まさか、ここまで驚かれるとは」
彼女の驚きっぷりに、若干引き気味の日比谷さん。今までこんな風に話して驚かしたんでしょうけど、彼女ほど驚かれたことはないのでしょう。
まあ当然か、と僕は考える。
「(毎日、楽しそうに見えますし)」
千歳さんと、瀬戸先輩と、日比谷さん。話は少ししか聞いていないけれど、きっと過去には僕たちには想像もつかない、辛いことがあったんでしょう。
それでも、笑っている。
辛くても、笑っていいのだと。
そんなことを、自然体で伝えてくれる人だ、この人は。
「……あ、そうだ」
過去で思い出した僕は、アホ顔であーん、と口を開けて焼き鳥を食べようとする忍者から、串ごと没収した。
「何で天井裏に潜んでいたのか聞いてないですよ。話してくれるまでこの焼き鳥没収」
「むグッ!? イッタアアアア!! って、そんな殺生な!!」
当初の目的、忘れてた。
……今更だけど烏間って名字なのに焼き鳥好きって、どうなんでしょう?
……えーっとですね、僕の家は、忍者の末裔でして。
今は戦争がないので、情報屋や、用心棒、探偵のような仕事をしています。ぶっちゃけ、なんでも屋ですね。僕のところは猫捜しぐらいしか依頼が来ないんですけど……あ、ハイ。スミマセン。関係ありませんでしたね。だからその焼き鳥食べないでぇぇぇぇ!!
……で、僕もまあ、幼い頃から忍者の修行をしていたんです。
一応長男なので、その、跡取り候補に数えられていたんですけど……出来が、あまりにも悪くって。
八歳の時、訓練中、命に関わるような失敗してしまって、父から叩かれて怒られて、跡取り候補から外れちゃったんです。
まあ、それは問題ありませんでした。僕には、妹がいたのですから。