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Re: 臆病な人たちの幸福論【『5000突破ありがとう!!』更新!】 ( No.396 )
日時: 2013/06/01 17:04
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)

 彼と、女の人は、同時に叫んだ。


「……ちょ、向日葵ぃぃぃぃぃぃ!?」
「はッ!? 兄貴!?」
「……え?」
「え?」



 ……今、この女の人、彼に向かって兄貴っていった?
 ……彼の話を、少し思い出してみる。そうだ、確か彼は、「妹がいる」といっていた。
 と、いうことは……。



「……ええええええええええええええええええええええええええ!?」



 この人が、家出して家宝盗んだ妹ぉぉぉぉぉぉ!?



「全然似てない!!」
「ヒデェ!!」


 同じように思ったのか、彼女と声が被った。
 バタン!! と、思いっきりドアが開く。僕は慌てて手を引っ込めて、後ろに下がった。

 ハアハア、と息を切らせたかと思うと、女の人——いや、少女は、キ、と彼を睨んで怒鳴った。


「ななななんで兄貴がここに……ってか、何簡単に家宝盗まれてんのよ!!」
「それはこっちのセリフ……ハア!? お前が盗んだんじゃん!!」
「ハア!? 私んなことしてねーよ! 大体んなこと私がすっか!」
「え!? でも父上がそういって……」
「ハア!? あの人私には『盗まれちゃったから探しに行け』っていってたくせに……!」


「……え?」
「……え?」



 相手と自分の情報が、矛盾していると気付いたのだろうか。まあ、傍で聞いていた僕らでも気付く。

 呆然として、相手の目をマジマジと見る二人。
 どちらも言葉を交わさないので、僕らは異様な緊張感に包まれる。
 耐え切れない僕はふと、まだ外に居る森永先輩の姿が目に止まった。


「……あの、とりあえず、中に入りませんか、森永先輩?」
「は! そうだよ、森永先輩この人とどういう関係……森永先輩?」


 森永先輩の目は、よくよく見ると光が無く。
 カクカクと動かして、森永先輩はこういった。


「ドビー悪イコ」
「森永先輩ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」


                  ◆


 

「……ごめん、向日葵。僕君のこと、ずっと疑ってた」
「判ればいいのよ兄貴。……とりあえず、私と兄貴の情報が矛盾していることは置いといて、勾玉の場所がわかったんでしょ? ならそっちを優先するべきよ」


 ……これが、先ほど『ハルジオン』で行われていた兄妹の会話。
 まあ最初、二人とも喧嘩腰でどうなるかと思ったが、そこまで兄弟仲は悪くは無かったようでした。ただ、片方は盗んだと思い、片方はぬけぬけと盗まれたと思って、怒っていたようです。
 ついでに、様子がおかしかった森永先輩も程なくして正気に戻り、僕らは学校の図書室へ向かった。
 図書室の天井裏から忍者が降ってきたり、願いを叶える勾玉とかが話に出てきたりしたが、久しぶりに会う兄妹の嬉しそうな顔を見て、これ以上非日常的な話題は出ないだろうと思った。
 高をくくっていた。



 そして、到着したら。




「オラアアア!! 死にてぇのかクソガキぃぃぃぃ!!」
「アアン!? 何だとオッサン!」




 ……校庭が、戦場になっていました。




「どーゆーことなのこれ」
「わけがわからないよ」
「何故ヤのつく職業な方々と、橘たちが校庭で戦っているのだよ」



 相手は銃こそ持っていないが、普通に長ドスや日本刀で闘っている。そして十人ほど居る。一方、お盆休みなのに何故かいる橘先輩と上田先輩は、木刀で応戦していた。
 改めてみると……橘先輩たち、チートだなと思う。というか最凶。良く僕は殺されずに済んだと思う。



「あ、あいつらは、うちを取り込んだヤクザ一家だ!」


 彼が叫ぶようにいったお陰で、謎が一つ解明される。


「ということは、勾玉狙いでここに来たのですか……っていうか高校にあんな怪しい格好で来るのは不味いんじゃ……」
「あいつらは場所も選ばないんですよ」




          「ってか見てないでお兄ちゃんたち助けようよぉぉぉぉぉ!!」



(何処か冷静な僕たちに突っ込む玲の声は、彼らがドンパチしている声にまぎれて消えた)
(作者もついていけぬ超展開、この話は無事に終わるのか!? 続く!)