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- Re: 臆病な人たちの幸福論【『兄妹の喧嘩』更新!】 ( No.407 )
- 日時: 2013/07/04 15:34
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
前回までのあらすじ!
校庭のいざこざから、兄弟喧嘩に変わってしまったお家騒動。
音速の速さ(※比喩です)で校庭を飛び出した烏間(兄)を追いかけて、向日葵と玲は共に何処かへと向かった。
それを止めるまでもなく見送った武田たちの前に、図書室のベランダから、謎のおじさんが現れた!!
◆
コオオオオ、と、風が渦巻く。
砂も舞って、雰囲気は一昔のドラマの決闘シーンだが、あまりふざけてもいられない。何故なら彼と彼女たちがドコへいったのか知らないから。
見失う前に追いかけたいのだが、このままこの人を放置したら、何だか凄く面倒くさくなるようだったので止めた。
「あなたは……何者ですか?」
とりあえず正体だけ聞いて、彼と彼女の後を追いかけようと僕は思った。
僕がその謎のおじさんに聴くと、彼はこういった。
「次回で公開されます」
「もう最終回ですよこれッッッッ!!」
「今年の夏休み……ふざけてますよね」「だからその言葉は以下略のその五」
——何故、あんなことをいったのか、あたし自身も判らなかった。
「……向日葵さん」
「何?」
同じスピードで並んで走るあたしたちは、傍から見れば少し奇妙に見えるだろう。何でこんな真夏の真っ昼間から、動きやすい服でもないのに一生懸命走ってるんだろう、って。
実際、あたしだってそう思ってた。
何でこんな日に、走っているんだろうって。そもそも、どうしてこの人たちに関わったんだろうって。
今更ながら後悔している。でもだからこそ、この兄妹を放っておけなかったのかもしれない。
「……確かに、鳥間さんは、本当にダメな人だったよ。食事中に図書室の天井裏から抜け落ちてくるし」
「抜け落ちてきた!?」
初耳だった向日葵さんは、目をくりぬく勢いで驚く。しょんぼりしていた顔が、すぐに呆れ顔に変わった。
「……あんのバカ兄貴、一体何してたの……」
「……でも、優しい人だっていうことは、一目でわかったよ……多分だけど、烏間さんは変わっていません。向日葵さん、いってたじゃないですか。誠実で真面目で優しかったって」
「……いったっけ」
「いったよ」
あたしがいうと、向日葵さんが俯く。
「……変わってなんか居ないよ、お兄さんは。きっと、変わってない。今さっきのはきっと、不甲斐ない自分が変わってないって自覚していたから、焦ってあんなことをいったんだと思う」
「……そうだとしても」
「向日葵さんが、変わってないって信じなきゃ、お兄さんは帰りにくいよ?」
そういって、あたしは笑う。
俯いていた向日葵さんは、あたしの方に顔を向けた後、少しだけ笑った。
「(あ、可愛い)」
不意に胸がときめいた。あたし女なのに。
元々、向日葵さんは綺麗な顔をしていたけど、ずっと顔が強張っていたから、凄みを感じた。けれど今は違う。柔らかくて、優しい顔だ。