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- Re: 臆病な人たちの幸福論【『兄妹の喧嘩』更新!】 ( No.409 )
- 日時: 2013/07/04 15:37
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
けれど、話は終わっていなかった。
「オイ、嬢ちゃん。よくもウチの舎弟をボコボコにしてくれたねぇ」
サングラスをかけた、いかにもガラが悪い男たちが出てきた。
何処から来たの? という突っ込みは、痛い目には遭いたくないから飲み込んだ。
……というかアレ? この格好の人たち、何処かで見たような……
「……アンタたち、校庭に居るヤクザの!」
「ええ!?」
校庭に居るヤクザって、確か烏間家の秘宝を狙って頭首が居なくなった烏間家を取り込んだっていうあれ!?
よく見ると、胸ポケットに紋章があった。——確かあの人たちも、同じ紋章を着けていた。
「ってことは……あのナンパヤクザの一員!? 向日葵さんと遊びたいとかじゃなくて、向日葵さんを組織的な意味で狙っていたってこと!?」
「ほう……察しとノリが良いな、嬢ちゃん。わざわざ説明してくれるとは」
「あ、どーも」
「ちょぉっと!! 何仲良くなってんのよ!! 玲もまんざらじゃない笑顔浮かべない!!」
褒めてくれたことが嬉しくて、つい頭をかいて感謝してしまったあたしに、向日葵さんのローツッコミが炸裂した。いや、手加減してくれたけど。
「アンタらのせいで家はメチャクチャ話はもみくちゃよ!!」
「フン……まあ、とりあえず、舎弟に手を出したこともあるし…………——くたばれぇ!!!」
ヤクザの一人が声を上げたと同時に——ワアアアアアアア!! と歓声を上げて武器を持った男たちが一斉にあたしたちに向かってくる。
「ってか何処に居たのこんな数!!」
ありえないここ住宅地を通る路地ですよね!? 物理法則とかどうなってるの!?
……自分でも的外れなツッコミをしていると思います。ぶっちゃけ、あたし大ピンチですよね。向日葵さんは武道できるけど、あたしヒッキーですからね基本。
……というか、流石にこの数を向日葵さん一人で伸せることが出来るのかな?
と不安に思ったのも杞憂だった。向日葵さんは余裕ある笑みを浮かべていたのだ。
「フン……こんなの、こうしてくれるわああああああああああああああ!!」
「ウワアアアアアアア!!」
あろうことか、向日葵さんはバットを持ち出し(それも木です。金属ではなく)、一振り振っただけで十数人もののヤクザを吹き飛ばしました。ってか、貴女も何処から出したんですか。……ツッコミがずれていることは承知してるけど、もうこれ以上驚いてしまっては身が持たない。
こうして、向日葵さんはバンバンとヤクザたちを倒していきました。
——……が、流石に無理があったようで。
向日葵さんが息を整えている間に、ヤクザの一人が背後を取った。
「危ない! 向日葵さん!!」
あたしは叫ぶ。
相当疲労しているようで、あたしが叫ぶまで向日葵さんは気付かなかったようで、背後をむこうとしたときの顔が、動揺に満ちていた。
結構早く振り向いたのに、既に相手は長ドスを振り落としていた。
ニヤリ、と悪人顔(ヤクザですから)で笑うヤクザ一員。
「向日葵さん!!」
「これでッ——————終わりだッ!!」
長ドスをそのまま振り下ろすヤクザ一員。
防御の姿勢もかわすことも出来ない向日葵さん。
止めろ、ともいえず、困惑のまま、ただ向日葵さんの名前しか呼べないあたし。
もうだめだ、と思っても、目を閉じることも出来なかった、その時。