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- Re: 臆病な幽霊少女【『参照三〇〇突破記念』更新!】 ( No.41 )
- 日時: 2012/10/22 21:59
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)
昼休み。あたしは、図書室に行ってみた。
チャラ女の話だと、暇があれば何時も図書室に居るらしい。
ちゃんとお礼がいいたくて、あたしは足を運んだ。
——何で、暇さえあれば図書室に行くのだろう、と思った。
静かな場所で読みたいからなのかな? って思ったんだけど。
「ほれほれ、仕事が溜まっているわよ」
「明らかにアンタの仕事だよな俺の仕事じゃないよな図書委員の仕事じゃないよなァァァァ!!」
——あ、うん。理由、すっごく判った。
「あら、雪ちゃん」
無理に図書委員君に仕事を押し付けていたダメナコせんせーが、あたしの存在に気付いた。
シャウトしていた図書委員君は、我に返ったようで、顔を真っ赤にして背けている。
——ううん、貴方は悪くないよ。悪いのは何をいってもサボリを止めないダメナコせんせーだから。
心の中で、そっと慰めた。
「……ってか、アンタ……」
「あ……」
図書委員君の目に、見覚えがある。
あたしよりも向こうが、先に気付いた。
「今朝の、事故りそうになった……?」
「あ、う、うん!!」
思わず、飛び上がりそうになる。
……あの時はまともに顔を見られなかったけれど、今マジマジと見ると。
——ヤダ……超カッコイイ……。
つり目で、澄んだ雰囲気。濡羽色の髪はストレートで艶がある。
これで何故、チャラ女が悪口をいっていたのか、良くわからない。イケメン好きのアイツなら、食いつきそうなのに。
は!! そんなこと考えている場合じゃない。
目的を思い出したあたしは、ガバッ!! と頭を下げた。
「け、今朝のあの時はどうもでした!! あ、あたしの名前は杉原雪です!! ろくに礼もいわず……しかも、気を失ったあたしを保健室にゃで……」
あ、あわばばば。何をいっているのか判らないし、微妙なところで自己紹介入れちゃったし、しかも噛んじゃったよ!
「い、いや。気にすんな」
図書委員君改めて三也沢君は、そんなあたしを笑って赦してくれた。
「い、いや、でも……」
「いいって、気にしないでくれ」
でも何かしないと、あたしの気が済まないんです。
そういおうとしたとき、大量の書類が三也沢君の手元にあることに気付いた。
「それ……」
「あ、うん。ダメナコの仕事」
「ダメナコじゃない。私の名前は光田芽衣子よ」
無駄にキリッ、とした顔でいうダメナコせんせーに、三也沢君はため息をつく。
「ダメな人間なことは変わんないじゃねーか……これを生徒に押し付けるなんてよ」
——そりゃため息をつきたくもなるわ。
話を聞くと、どうやら図書委員は彼一人らしい。その理由が、大方ダメナコせんせーのサボリのせいで、図書委員の仕事があまりにも多く、辞めた人間が続出したとか何とか……。
自業自得といいますか、無限地獄といいますか。
だけど、その書類を片付けることが出来れば、三也沢君を助けることにもなるだろう。
「あ、あの……良かったらその書類の処理、手伝わせてくれませんか?」
恐る恐る、あたしはいってみると、彼はちょっと驚いた顔をして。
でも笑って、「じゃあ、お言葉に甘えて」といった。
◆
それが、出会い。
それ以降あたしと三也沢君は、ぎこちなくも挨拶を交わすような関係になっていた。
そして、短いながらも、彼と居る時間が、あたしの幸福な時間だった。
彼は、チャラ女がいっていた噂とは、かけ離れている人だった。
寧ろ、あたしには英雄さんに見えるほど。
……臭いセリフだって思われそうだけど、でも良く考えてみて?
見知らぬ誰かが事故に遭いそうになったところを助けるなんて、普通の人が出来ると思う? ……あたしには出来ない。そんな人が、実は世界を救う英雄でしたーっていわれても、あたし信じる。
強くて、かっこよくて、優しくて。