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Re: 臆病な人たちの幸福論【『静雄ルート』完結! オチはない!】 ( No.416 )
日時: 2013/10/19 20:53
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: MuUNITQw)











「……そいぎ、千歳さん。自己紹介ば」
「は、初めまして。大八木千歳いいます」
「私の名前は坂上木之南姫命」
「うわ、何や気軽に呼んだらアカンような立派な名前ですね……」



 どや顔で名乗る女の子に対して、軽く怯えかかってる千歳さん。
 おお、いかにも素晴らしい笑顔を浮かべている。


「貴方には特別に、上南姫って呼ぶことを許すわ」
「は、はい! 上南姫様!!」


 年下にはいつも兄貴らしい態度で接する千歳さんが、子供のような顔で怯えてる。
 まあ、でも……。


「ただ単に、『坂の上にある楠』って意味なんじゃけどねー」
「だまらっしゃい」


 思わず漏れてしまった突っ込みを聞かれて、ポカンと殴られた。


「……とまあ、こんな感じじゃけん、祟られる心配はせんでええよ、千歳さん」
「……っちゅうても……あー……」



 ハア、と神様は思いっきりため息をついて、どうでもよさそうな顔で(というかまさしくそうであった)、こういった。


「めんどくさいから、もう南でいいわみなみで。要からもそう呼ばれているし」
「南?」


 キョトン、といい年こいて子供のような仕草で、千歳さんは首を傾げた。


「私あだ●充ファンなのよ」
「まさかの『タ●チ』からの!?」
「後、高●みなみファンでもあるわ」
「神様って意外にオタクなん!? っちゅうかテレビあるん!?」



 カルチャーショックを受ける千歳さん。
 その後、南っちが神主さんの家で飯を食わせてもらっているとか、その際にアニメを観ているとか、好きな漫画は何か、有名になりそうな作品はどれかなどで盛り上がっとった。



                     ◆


 同じオタク仲間ということで、あれだけ祟られないか心配していた千歳さんは、一時間後には南っちと打ち解けておった。



「……にしても、要がここに来て、もう七回目になるのか」


 南っちの声に、俺は覚醒する。
 ……とんでもないオタクの会話についていけなくて、意識が何処か遠くへいっとった。


「そうじゃなあ、小五年の時にここに来たけん」
「小六でしょ」
「え? 計算があわんじゃなか?」
「七回目よ、七回目。今から順に遡って数えてごらんなさい」


 南っちにいわれて、指折りで数えてみると、確かに最初会ったのは小学校六年生の時になる。


「ホントじゃ……」
「あの時の要は、お父さんの故郷を求めて、ここに来たのよね。そしてそれが丁度、終戦日である今日だった……」
「あ……」
「どうしたと、千歳さん」
「あ、いや……」


 歯切れ悪くいう千歳さんだったが、グ、と意を決して、こういった。
















「そういえばここは……原爆が落ちたところでもあったなぁ……って」






 それは、日本の誰もが知ることだと思う。
 第二次世界大戦で、二つの県に原子爆弾という恐ろしいものが落ちたこと。
 それはモノや人を破壊するだけではなく、かろうじて生き延びた人々の健康も蝕んでいたということ。
……勿論、全然健康に育った人も大勢おる。けれど、被爆場所で育ったというだけで、差別された人々もおった。