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- Re: 臆病な人たちの幸福論【『第五部開幕です!』】 ( No.434 )
- 日時: 2013/07/24 18:20
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
「お前さー、フウちゃんとどうなったわけ?」
「……どうって?」
が、それがいけなかった。
どうせくだらないこというんだろうなー、とは予想していたが、橘は俺が思っているラインの上を行った。
「だからさー! お盆休みの時に、二人で泊まりに行ったんだろ!! その際セックスだってしたんだろ!?」
ブッハーッ!!
口に含んでいたパンが、思いっきり吹き出てしまった。
「うわ! 汚いぞ三也沢!」
「あ、悪い上田……だが文句は橘にいってくれ」
「何でだよ! 濡れ衣! 理不尽!」
「お前がおかしなこというからだろうが!」
「だって気になるんだもん!」
「いっとくが俺らはお前らが望んだようなことはしてねーぞ!」
断じてするわけが無い。
ダメナコに冷やかされたり虎太郎にゴムを渡されたりしたが、即行に返り討ちにしてやった。
……確かに同じ部屋で寝たりはしたが、しかしはしかし、そんなことはしていない。
もう一度いおう。断じてしてない。
「…………本ッ当に、してないんだな?」
「さっきから五月蝿いぞ」
そういうと、思いっきり橘はため息をついた。
「……やっぱ諷子ちゃん、不憫だなぁあぁぁ……」
「不憫っていうなっつったろ」
「お前に向けてじゃねーよ。諷子ちゃんに向けてだよ」
いつの間にかフウの呼び方が「宮川さん」からちゃん付けに変わっている。
「諷子ちゃんから聞いたんだけどさー、お前諷子ちゃんとキスすらもしてないんだってなー」
一体何処で仲良くなり、何をフウと話しているんだ。
というか、フウも他人になにいってるんだ。
「お前、男としてヘタレじゃね?」
「根性なしー」
「甲斐性なしー」
ヘラヘラ笑いながら俺を責めてくる姿を見ると、怒りの頂点を通り過ぎて逆に冷静になってしまった。お盆の時、散々ダメナコと虎太郎にそのネタで弄られたから、多分耐性が出来たんだろうな。
「……だったらお前ら、聞くけどよ」
「何をだよ?」
いまだヘラヘラと笑いながら俺を弄る面々。
だが、この言葉をいわれたら、そんな顔も出来なくなるだろう。
「お前らは……彼女作ったことあんの?」
予想したとおり——空気が凍った。
「俺のこと甲斐性なしー、とか根性なしー、とかいうけど、お前らその前に彼女作ったことあんの?」
「……」
思いっきりそっぽを向く面々。
三人から浮いた話は聞かない。俺が知らないだけという可能性もあるが……最近彼女が出来ていたら、他人の恋愛事情に首を挟まないよな。それどころじゃないんだから。
「他人のことより、自分の心配したほうがいいんじゃねーか?」
「うっせぇよ!! 判ってんよそんぐらい!!」
ブワ!! と涙目になる三人は、口々に訴える。
「こちとら出会いもなきゃ時間も無いんだよ!! なんせバカだから!! 勉強しなきゃなんないから!」
「あー……確かにお前バカだもんな」
「肯定すんなよ!!」
じゃあいうなよ。
橘の次は、上田が訴えた。
「いいんだよ俺は!! カワイイ妹がいるもん!!」
「せめて犯罪には走らないように」
「可愛いは正義!!」
「妹に手を出したら俺、友達止めるからな」
もうダメだこいつ。完璧にシスコンになってる。武田も上田妹も苦労してるな……。今でも犯罪を犯す人みたいだ。
前回橘が冗談半分でいった時のあの魔王の迫力を見ている俺は、上田にその気があっても、止める気は無い(止めたら絶対俺が死ぬ)。が、そんなことをやったら、俺は二度と上田の顔を見たくないだろう。その名の通りに「飢えた」人になってるだろうから。
最後に森永。
「——二次元の女性が嫁ッ!! 三次元は興味が無い!!」
「…………」
俺は瞬時に悟った。何故頭脳明晰容姿端麗(メガネだが)文武両道で有名な森永に一切浮いた話がないのか。
というか、二次元にしか興味が無いなら、彼女がいないことぐらいで泣くなよ。