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- Re: 臆病な人たちの幸福論【『第五部開幕です!』】 ( No.440 )
- 日時: 2013/07/31 19:40
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: l6pfUsAS)
第二章 労働少年の秘事
「そういえば確かに最近、カナちゃんの様子がおかしかったなー」
フウがそういったのは、学校が終わって、瀬戸の家に向かって道を歩き始めたすぐのことだった。
……とりあえず。
「……本人の目の前では、カナちゃんて呼ぶなよ」
俺はもう慣れたが、流石に男に向かって「ちゃん付け」は痛いだろう。
昼食時の際に出てきた会話に触発されて、俺はフウと一緒に瀬戸の家に向かうことにした。何故フウも一緒かというと、フウも「行きたい」といったからだ。……理由でもなんでもないな。
「判ってるよ。でもかわいいのになー」
「男に可愛らしさを付け加えると絶対きもくなる」
「そんなことないと思うけどなー」
普段は俺の友人に対して、名字呼びに君付けをするフウだが、俺と話しているときには、
名前呼び、しかもちゃん付けする。瀬戸は「カナちゃん」、橘は「トオちゃん」、森永は「シンちゃん」。
最初、会話で急に出てきたものだから、思わずフウの頭を疑った。いや、ホント思わず冬眠の頃の後遺症が今になって出てきたと思ったんだよ(勿論フウに怒られたが)。
ちなみに、上田だけは「上田君」と呼んでいる。なぜかって? 読者の皆さんなら察してくれ。だが、読者の皆様の尽力があれば、ひょっとしたらフウの名前呼び+ちゃん付けも現実になるかもしれない。
……と、余計なことを言い過ぎた。もうメタネタはやめると決めたのに。
話を戻そう。えーっと、瀬戸ん家にいくんだっけ?
「……っていうか、瀬戸二つもバイトやってるんだろ? 家に行ってもいないんじゃないか?」
喫茶店から真っ直ぐ、交通整備のバイトに行く方が自然のような気がする。
だが、フウは首を振っていった。
「でも、夜間のバイトも入れたのなら、そろそろ帰ってきていいと思います。喫茶店の営業時間も終わりましたし、一人暮らしだし、そもそも瀬戸君の性格だと、節約とかの理由でちゃんと自炊してそうですし、流石に、休み無しに二つのバイトを入れるのはキツイと思うので、一度家に帰ってご飯を食べるんじゃないでしょうか」
なるほど、そっちの方が一理ある。
……というか。
「……そっか。この時間、晩飯の時間か」
だからこんなにも、美味しそうな匂いが何処からも無くあちこちからしてくるのか。
ああ……昼飯ろくなもの喰ってないから腹減った……。
『おかえりー!』
何処かで、そんな女の人の声が聴こえた。
どうやら、この住宅街の何処かの家に、一人の子供が帰ってきたようだ(ここからじゃ姿は見えなかった)。