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- Re: 臆病な人たちの幸福論【『優の独白』更新】 ( No.513 )
- 日時: 2013/11/13 23:44
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: MuUNITQw)
——判っとうたハズやった。
……心のどこかで、あたしはアイツラに改心して貰いたかったんや。
謝って欲しいわけやあらへん。仲良うなりたいわけやあらへん。
でも……このままあたしが逃げ出しとうたら、次は一体だれが標的になるん? だれが、犠牲になるん?
それだけは、あたしが赦すことは出来きへん。
誰かに擦り付けようみたいやないか。自分が辛いことは、他人にとってもつらいことのハズやのに、それを判っとうて、逃げ出しとうみたいやないか。
例え、あいつらに侮辱さようても、死ねと言われようても、あたしの人間としての誇りは一向に傷つかへん。やって、明らかに悪いんはあいつらやから。
せやけど、もしここで、逃げ出しようて、誰かがあたしの知らへん所であたしに向けられとうた屈辱の鉾が向けられようたら。……想像しようだけで、吐き気がする。
きっと、ユキが通っとう学校は、素晴らしい学校なんやろう。
新聞でも読んだ。長い間冬眠しとうて、こん睡状態になってしまっとった女の子の為に、沢山の人たちが見舞いに来たんやと。そして、その人が好きな桜の絵を、体育館の壁一面に描いて張ったんやと。
何よりも、路上で絡まれとうた見知らぬあたしを、ユキと、その友人のリナとモエは、助けてくれた。
そんな場所に行けたら、きっと毎日が楽しいんやろうな。
辛いこともあるんやろうけど、それでも、こんな風に存在自体が否定されようような日常とはオサラバ出来るんやろうな。
せやけど。
そうしたら、今の屈辱を、否応なしに忘れていくんやろうな。
そしたら、アイツらのことも忘れようて、たまに思い出しようた時に、あたしの代わりに誰かがいじめられとう噂を聞くんやろう。
そしたら、他人ごとのように聞こえるんやろうな。
それは、とても嫌やった。
確かに、学校は最低の場所ばっかやった。中学も高校も、沢山勉強できると思っとうたから、進学校に進んだのに。勉強ばっかで忙しとうたら、誰も他人にちょっかいだす暇があらへんと思っとうたんに。説明会とか、オープンスクールとか、「私の学校はみんな仲良しです」「仲間と勉強できるシステムになっています」「教師は生徒に親身になって教えます」「楽しい学校です」とか言っとうたくせに、入ってみよると先生が既に生徒をいじめておった。
本当に、吐き気の連続地獄やったけど。
それでも、意味はあった。
こんな最低なことばっかやったけど、「こんなんは間違っとる」って、一人で言い続けようことぐらいは、出来たから。そんくらいは自由やったから。
それが例え、独りで闘うことになりよっても。可笑しな人間やと思われようても。
言い続けることしか、あたしはやれへん。
言い続けることを止めてしもうたら、あたしは、後悔する。今まで受けてきとった屈辱が、意味があらへんように思えてくる。そう思うたら、凄く悔しい。
それにさ、意味があらへんなんて、やっぱ可哀想やろ?
あの学校におるあいつらはどうしようもあらへんクズやったけどさ。それでも、存在自体を否定しよう辛さは、あたしが知っとるから。
吐き捨てとうぐらい沢山ある嫌なことでも、それには意味があるって思っとっても、バチは当たらへんと思うんやな。