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- Re: 臆病な人たちの幸福論【第五部後半スタート!!】 ( No.526 )
- 日時: 2014/01/27 21:45
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: T5S7Ieb7)
ワタシがまるで血も涙もない冷徹な人間だとフラれた男はいうが、ワタシはこんな態度を取るだけでも心苦しいんだからな! ワタシが男不信になった日にゃお前らのつけてるものちょん切ってやると誓っているワタシだ。
……なんて、怒れば怒る程、惨めになってくる。
「千代—、ごめーん。今日彼氏との約束があってさ……」
「あ、うん。気にしないで」
「ううん。ホントにごめん」
友人よりも彼氏を優先する。まあそれは仕方がないだろう。女と女の間には確執にせよ友情にせよ何かが残るが、男と女の間には、別れてしまえば意外と簡単に何も残らなくなるらしいから。本当かどうかは知らないけれど。その代わり男嫌いのワタシは今日の放課後が空いてしまったぞ。
このように、仲の良い友人は、大体皆男の子と付き合っている。
ワタシからしたら皆同じように卑しい顔をしているのだけど、友人がとても幸せそうな顔をしていたら、いうにいえない。
こういう悩みは、友人に相談したって本気にされない。
ワタシは異常なまでに告白されている。人から見たら羨ましいだけなんだろう。ちやほやされたい気持ちはワタシにもわかる。
だから、いっても「贅沢」なニュアンスにしか聴こえない。または嫌味。
けれど、ワタシにとってはぶっちゃけ先行きがとても不安なぐらい、本気で苦しんでいる悩みだ。
「(と、いうよりも……多分、誰も判ってくれないと自分で思っていることが苦しいのだと思う)」
……友人と共感できないこの悩みは、本当に苦しくて。
ワタシは、あまりにも誰かと一緒に共感することに資質がなくて、そして誰よりも共感したいという気持ちに飢えているのだと思う。
家庭のことも、いじめのことも、容姿のことも。数える程度には相談したことがあるけれど、いずれにせよ全部「気にしない」「うらやましい」としか返って来なかった。
新しい言葉がないから、退屈でつまらなくて。けれど、なんでだろう。何でか、聞けば聞くほど気持ちが重くなっていく。
それは、毎朝毎朝繰り返される罵詈雑言が書かれた紙を読むときと同じで。
……あの性格の悪いのと自分の友人を比べると、そんなこと考えちゃダメ、アレと一緒にしちゃダメと、今度は罪悪感が襲ってくる。そんなことを考えているうちに、大体一日が終わっているのだ。
今日もそれは例外ではなく、ベッドに飛び込むときには、身体は疲れていないのに、酷くだるくなっている。
人と付き合うのは、本当に疲れて、……自分が判らなくなる。
友人は悪くはないのだ。多分、ワタシが悪いのだと思う。男の嫌なところを全部無視すればいいのに、気付かなければいいのに、そういうところを細かく見てしまうのだ。そういう所が改善されれば、きっと、あの下駄箱にはひどくきたなく書かれた紙は入れられなくなる。
ワタシが悪いのだ。友人は全然悪くない。ワタシが友人の立場なら、同じようなことをいうしかないし。
……ワタシが、悪いんだ。
こんなことを、考えるから。
「……今日も、お父さんとお母さん帰って来なかったな……」
そろそろ日付が変わる時計を見ながら、ワタシは眠くない瞼を閉じた。
今日も両親は仕事で忙しい。でも、両親は悪くない。
悪いのは、ワガママを思うワタシなのだと、思う。
だるいのに、全然眠れないの
(「だから誰か、一緒に寝て」)
(「お父さん、お母さん。……助けて」)
(ワタシは必死に、この感情を汚いものだと思って、押し殺した)