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- Re: 臆病な人たちの幸福論【瀬戸君、ご乱心】 ( No.545 )
- 日時: 2014/03/17 21:40
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: MTGEE0i4)
- 参照: コメント遅れてすみません!!!
中絶、麻薬、宗教、リスカ。
世の中の生臭いことが、高校に入ると結構間近になってくる。
そういうのは、ワタシは絶対に関わりないと思っていた。
というか、そういうのに関わって、痛い目見るのは自業自得で、周りから見限られ見捨てられても当たり前だと、冷めた感情を持っていた。
例えそれが自分の意思で関わったことではなくても、それは隙がある自分が悪いのだ。痴漢もしかり、強姦もしかり。
……そう、ワタシは、バカだったのだ。
自分がこうなって、初めて気づいた。
口裂け女のひとつの過ち
ある日のことだった。
「ねえ君」
駅前で、男の人に声を掛けられた。その時点で何時ものワタシは、警戒心を抱くのだけれど、今回は何故か、そう身構えることがなかった。
顔はまあまあ。ルックスもまあまあ。
ただ、男の人ではあまり見かけない、優しそうなたれ目が気になった。
そういう男を世間では「なよなよした男」「優柔不断な男」と評されることが多いらしいけれど、そんなのはワタシは気にしなかった。
どうしてか、酷く彼に惹かれたのだ。
男嫌いだと強く想っていたこのワタシが。
「ちょっと、話をしてみないかい?」
何時だって、男という性別を聞けば、嫌悪するワタシが、その時、その男の人を受け入れた。
その人は山田さんと名乗り、ワタシを喫茶店に連れて行ってくれた。
仏頂面で紅茶を飲むワタシと違い、山田さんはニコニコとブラックコーヒーを飲んでいる。
本当に良く笑う人だった。
「いやねー、こんなかわいい女の子に声かけて、犯罪臭漂っているとは思うけれど、全然怪しい人じゃないからね」
「……怪しい人ほど、そういうことをいうって聞いたことあるけれど」
「…………だよねー。けれど結局、君と一緒にお茶が出来たからいいかな?」
それだけワタシとお茶がしたかったのだろうか。
確かにワタシは目立つ顔だちをしているけれど、そこまで他人の気を惹けるものなのか疑う。ワタシが男だったら、ちっとも笑わない愛想のない女なんて、目を合わせることもしたくないと思う。
……変な人だ、この人。
「……えーと、直球はちょっと哀しいっていうか……」
「あれ? ワタシ声に出してました?」
「うん、バッチリ」
「すみません」
「あ、うん。……イイヨ、全然キニシテナイカラ……」
……やっぱり、可笑しな人だ。
「それよりも、大八木さん」
「はい」
「何か、悩み事があるんじゃない?」
思わず、山田さんを凝視してしまった。
まさしく、山田さんに声を掛けられるまで悩んでいたことがあったからだ。
「いや。誰でも悩み事はあるものだけどね」
慌てて山田さんが訂正する。……そうだよね。ビックリした。ドンピシャでタイミング良かったから心を読まれたかと思った。
「……なんていうんだろう。悩み方が高校生らしくないっていうか」
「それは遠まわしにワタシが老けているといいたいのですか?」
「ち、違うよ!! そうじゃなくて、こう……分別っていうのかな。悩んではいるけど、それはそれ、これはこれ、みたいな感じで。悩む時を選んでいるっていうか……何時も嘆いているわけじゃないっていうか……」
……本当にこの人は何ものなんだろう。
それは確かに、今のワタシに当てはまることだった。
嘆きっぱなしでは疲れてしまうということを人生十七年目でやっと習得したワタシは、悩む時間を決めたのだ。
当初は大変だった。何せワタシ、融通が利かないというか、これと思ったことには一直線で、この悩みの答えが出るまでは悩み続けないと気が済まなかったからだ。切り替えようと思えば思うほど、答えを出さなければいけないと気が焦ってしまい、結構苦しんだ。
けれど、最近はちょっと上手くやっていけているような気がする。ちゃんと悩むときとそうじゃない時に切り替えができるようになったのだ。それを他人が気づいた。
……かいつまんでいうと、ワタシは嬉しかったのだ。