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Re: 臆病な幽霊少女【第二部スタート!!】 ( No.57 )
日時: 2012/10/30 21:35
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)


『参照五〇〇突破記念 【もしも】』



 何時もの部屋で、フウがこんなことを聞いてきた。



「ねえ、ケンちゃん」

「ケンちゃんいうな。どうした?」



 恒例のやりとりを(無駄だと思いつつも)行い、俺は尋ねる。

 フウは、珍しく本を読んだまま、こういった。


「もしもですよ、明後日地球が滅亡したら、明日、何をします?」


 何処からか、聴いたことのない鳥の声が、聞こえたような気がした。


                  ◆


「……また、随分突拍子な質問だな」


 本を降ろした俺は、フウの方へ向いた。

 何時もは逆だ。フウが俺の方を向いて、俺が本を読んでいる。


「その本は、地球滅亡について書いてあるのか?」

「いいえ」



 フウは首を振った。


「何となく、思っただけです」

「そうですか」

「で、だとしたらどうしますか?」


 ペラ、とページをめくって聞くフウ。

 ……何だか、今日は可笑しい。

 何時もだったら、表情をコロコロと変える癖に、今日は無表情。ってか、声もいつもより静かだ。

 何かあったんだろうか? 聞いてみようと思ったが、やめた。

 多分、コイツは、この質問に答えた後じゃなきゃ、話さないだろうから。


「……俺だったら」


 背もたれに重心をかける。集中しやすいように、目を閉じた。

 もしも俺が、明後日地球が滅びると知って、明日何をしようと思うか……。


 ……多分、そのまま一日を過ごすだろうなあ、と思った。

 あの日、フウに自殺を止められたが、やっぱり心の何処かで自殺志望を抱いている。

 だから、そのまま過ごすだろう。滅亡という運命を、そのまま受け入れ、飲み込むだろう。




 ……ほんの少しだけ、脳裏に浮んだ。

「……そうだな」

 フ、と笑う。


「せめて、最後の日は」


 可笑しいなあ。


 一瞬だけ、コイツの笑顔が浮ぶなんて。


 そして、それしか思いつかないなんて、可笑しな話だ。





「二人で、全力で笑おう」



 そういうと、フウは驚いた顔をして、本から目を離した。

 そして、すぐに、何時もの穏やかな顔でいった。




         それは、最後の日じゃなくても、できることだよ



(遠い過去の思い出、)

(そんな俺とアイツの最後の日に、俺はアイツを笑わせることは出来なかった)