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Re: 臆病な幽霊少女【参照五〇〇突破記念更新!!】 ( No.62 )
日時: 2012/11/02 17:04
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)


 こんなバカは、フウに出逢わなければ良かった、とか思い始めたこともあった。あれは、バカ母から暴力を振るわれた時だっけ。

 あの時、フウに出逢わなければ、そのまま死ねたのだと。こんな屈辱的な想いをしなくても良かったと。

 ……今から死のうって想っても、アイツの笑顔と言葉が、ふと思い出して。


『わたしは、この世界は捨てたもんじゃないって思っています』

『生き方は、選べるんですよ?』



 あの言葉を思い出すたびに、期待してしまうんだ。

 まだまだ、楽しいこと、面白いことがあると。

 こんなに辛い目に合っても、何時かは突飛な世界に入れると。


 だから、死ぬに死ねなくなった。

 これはきっと、フウに出逢ったからだと思う。今だったら、出逢って良かったと、そう心から想っていた。

 ……まあでも、楽しいわけじゃないけどな。


 それでも、俺が生きているのは、フウに出逢えて、変われたから。

 少しだけ、他人にとっちゃ全く変わっていないと思われているだろうけれど、それでも、ほんの少しだけ変わったのだ。

 俺は、変われないと思っていた。だから、つまらない日常から早く抜け出したくて、自殺しようなんて気になったのかもしれない。

 今は、それがないのだ。


 これは、大きな進化だと思う。こんな風に、物事を捉えるようになったのは。

 誰も褒めてくれないから、自分を褒めるとしよう。ナルシストと思うなよ? ぼっちなんて思うなよ?(後者は実際そうなんだが)


 けれど、人間の欲とは底が見えない。

 まだまだ変われる。変えたい、と思い始めている。


 また、こんなつまらない日常を、フウが壊してくれるんじゃないかと期待している。



 ……そんなこと、あるはずないのにな。

 この想いが何なのか、とっくに俺は気付いている。

 けれど、認めれば認めるほど、苦い想いが広がる。



 この想いを振り切るように、俺は空を見上げた。

 灰色の空は見当たらなく、綺麗な青空だ。



 ああ。


「会いたいなあ」


 ……そんなことを呟けば、苦い想いはさらに増すのに。

 こみ上げてくる熱いものを押し留めるように、俺は暫く、立ち止まって空を見上げていた。


                 ◆


 死にたい、って想ったことは、数え切れないほどある。

 人に失望したり、全く見えない未来に絶望したこともある。


 けれど、何度も何度も希望を抱いてしまう。

 きっとたどり着けると思って、つかみどころのない壁をよじ登る。


 その度に、すっと何度も落ちていく。

 高く登ったほど、そこから落ちる痛みは増えていく。

 登らなければいい、なんていう人も居ると思う。

 けれど、登らなくては、頂上にはたどり着かないんだ。
 



 希望を抱かなければ、奇跡なんて起きはしないんだ。