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Re: 臆病な幽霊少女【第一章『春を迎えた文学青年』更新!!】 ( No.64 )
日時: 2012/11/06 16:41
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)

第二章 困惑する文学青年


 信号が、青になった。

 ブルルルルン、とエンジンの音が響く。

 俺の目に映るのは、歩きよりも早く、風景が変わっていく光景。

 新車独特の匂いがする。最近買ったんだろうな、と安易に想像がついた。


「やっぱり車買って正解だったねー、杏平君」


 ……。


「だなー、美雪。レンタルカーじゃ、何時もは使えないものなー」


 ……。

 …………っは、現実逃避してしまった。

 今の俺の心境を語ろうか。

 勿論、このニコニコ能天気バカップルの会話に、ネット上の言葉「リア充爆発しろ」とも思っている。

 だが、それ以上に突っ込みたいことがある。



 ——どうして、こうなった?



                   ◆


 思い出せ、思い出せ俺。どうして、バカップル(以下略)に巻き込まれたかを!

 ……そうだ、確か俺は、図書館で課題して、腹が減ったからマク●ナルドで食べようと思って、街中を歩いていたんだ。

 そしたら、杉原を見かけたから、声をかけたんだ。

 杉原の傍には、このバカップル——宮川美雪と高田杏平だっけ?——が居て。

 で、初対面であるこの二人(正確には美雪さんなんだけど)に、いきなり名前を言い当てられたり、幽霊であるフウのことを知っている? と聞かれたり。

 困惑している俺と、事情を知らない杉原を、この二人は問答無用で車に押し込めてくれたんだ……。







 ——って、誘拐じゃねえか!!

 いや、多分この二人は誘拐しようと思って俺達を車に乗せたわけじゃないだろうけど、客観的に考えたら、これって犯罪じゃん!


「あー、確かにそうかもねー」

「……え?」


 運転している美雪さんが、鏡越しでフフ、と笑っていた。

 その笑っている様子が、フウととても良く似ていた。


「声。出てたよ」

「え、ホントですか!?」


 思わず、口に手をあてる。頬に熱が集まった。

 うっわ、凄く恥ずかしい……。


「ごめんねー、ちょっと舞い上がっちゃって、行き先いうの忘れてたー」


 恥ずかしい思いをしている俺に構わず、美雪さんは満面の笑みでいう。


「でも、いう前にもうそろそろつくから、ちょっと待っててねー」




 言い方も、似ている。

 本当に、良く似ている。

 顔立ちは然程にてはいないのに、笑い方とか、雰囲気が。

 アイツに、良く似ている。

 ……そういえば、フウの名字も宮川だった。美雪さんの名字も、宮川。

 ひょっとして、二人は血縁関係なんだろうか?

 俺がそのことを聞く瞬間。


「あのー、何で、あたしも……?」


 恐る恐る杉原が手を上げて発言する。律儀だな。

 杉原の発言に、今度は助手席に乗っている杏平さんが答えた。


「あー、ちょっと人手が足りなくなるから……っと」


 人手?

 そのことを聞こうとした瞬間。

 キキ、とブレーキ音が遮った。


「ついたよー」


 美雪さんの無邪気な声が、狭い車内に良く通る。

 ……今日は良く、いう前に遮られるな。