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- Re: 臆病な幽霊少女【第三章 パート2更新!!】 ( No.75 )
- 日時: 2012/11/10 19:23
- 名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: FIlfPBYO)
まあ、そんなこんなで携帯ゲーム機で遊ぶこと一時間。
「……フフフ、今回は勝ちを譲ったのよ三也沢君」
「何負け惜しみいってるんだお前……」
……ゲーム機で遊んでいたハズなのに、俺達は何故か息切れしていた。
「あー! でも楽しかった」杉原が背もたれに寄りかかる。
「……何時か、三人で遊びたいね。諷子さんと、三也沢君と、あたしと三人で」
「……そうだな」
フフ、と笑う杉原に、俺も笑い返した。
「あ、でも諷子さんって大正生まれの人よね? 判るのかな、ゲーム機」
「大正生まれっていっても、終わりに生まれて殆ど昭和の人間のようだけどな。それにアイツ、俺以上に現代文化に詳しいから、大丈夫だと思うぞ?」
フウが、「ジーンズのこと今じゃデニムっていうんだよ!」といっていたのは、まだ記憶に新しく思える。あれには驚いた。
他にも、流行のファッションや最近の政治の状況のことまで呟いていたので、恐らく平気だろう。
「……ねえ、三也沢君」
「なんだ?」
「諷子さんと三也沢君の出会いって、一体何なの? 諷子さんは半世紀以上も眠っているのに、三也沢君は諷子さんと出会っているんだよね」
……そうだった。そういや、杉原には、まだ俺とフウの関係を、話してはいないんだよな。
なのに、ずっと付き合ってくれたんだよなあ。
杉原は「昔命を助けてもらった恩だよ」といっていた。別にそんなに気にしなくていいことなのに。
だから俺は、話すことにした。
ここまで付き合ってくれる杉原に、ちゃんと知ってもらいたかった。
俺とフウが、一ヶ月ぐらいの間、どんな風に過ごしていたかを。
……一体、話し始めてから何十分かかっただろうか。
俺は口下手だから、変なところを繰り返していたかもしれない。肝心なところが、伝わっていないかもしれない。
杉原の反応に、ドキドキしながら待つこと数秒。
「……じゃあ、諷子さんは、三也沢君の大切な人なんだね」
杉原が微笑していった。
意外な反応だ。てっきり、「え? ちょっとワケわかんない」という反応をされると思っていたから。
「フウの冬眠のことは驚いていたのに、生霊のことは驚かないんだな」
「いや、それ聞いたら、もうなんでもアリかなと」
ナルホド、と妙に納得した。
「それに、自殺しようとした三也沢君を諷子さんが助けてくれたから、事故りそうになったあたしは三也沢君に助けられたわけじゃん? 遠回りで、諷子さんはあたしを助けてくれたんだから、その人の存在を蔑ろにしたくないって、聞いてて思った」
「……そうか」
どうやら、俺のいいたかったことは、ちゃんと杉原に伝わったようだった。
「ありがとうな」
「何、いきなり?」
ククク、と笑う杉原。
「……いや、何でもないよ」
嘘だよ。
本当は、嬉しかったんだ。
話を聞いてくれる人は、本当に少なかったから。
この話を信じてくれる人がいるなんて、思ってもいなかったから。
フウが居なくなって、寂しかったし、あの時会わなければよかったとか思った時期もあったけれど。
それでも、大切な想い出だから、誰かに知って欲しかったんだ。
話を聞いてくれて、ありがとう。