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Re: *愛迷華* (実話) ( No.101 )
日時: 2013/05/25 22:57
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 6C3OJFg3)
参照: ぼよよよん

第五十一話『加耶の決意』


孝仁に告白され、一夜が経った。
真枝の気持ちを知ってるのに、孝仁の返事を保留してしまった私。


そんなことをしてしまったのだから自業自得だが……。
学校にいる今、気分が非常に重たかった。


「——……マジあいつ腹立つんだけど」


そんな私とは裏腹に、何やらイライラしているハチ。
今日も学校では学祭準備真っ盛りで、作業している教室の中で携帯をいじりながらハチは小さく舌打ちをしていた。
……なにがあった、ハチ。


「も、帰ろ、あいつうざい」


ハチは立ち上がり、横に居た戸沢の腕を引っ張ってバッグを持った。
すると加耶は「あ」と言い、少しだけ手を伸ばす。
……が、ハチには届かず。


その行動を見ていたあゆは、加耶の頬をつんつんと触り始める。


「なに、加耶。小八に今何か言いかけてなかった?」


あゆがニヤニヤしていると、加耶は次第に顔が赤くなっていった。
そして、力強い口調でこう言った。


「皆、聞いて! ……かやね、小八君にメアド聞こうと思うの……っ」
「おおおおおおお!?」


加耶の宣言に、あゆと麻里と真枝は叫ぶ。
私はワンテンポ遅れたが、加耶に近づいて肩に手を置いた。


「加耶、応援してるよ」
「……依麻……」


私が色々悩んでる暇はない。
だから今は、加耶の恋を応援しなきゃ!!
私はそう決意し、加耶を見る。


「加耶がそう決めたなら、ほら。もう小八教室から出ちゃったし、追いかけなきゃ!!」
「……うん……っ!!」
「走れ、加耶!!」


私が笑顔でそう叫ぶのと同時に、加耶は走り出した。
残された私と麻里とあゆと真枝は、顔を見合わせる。


「……私達も、追いかけよ!!」


もう遠くに居る加耶の背中を追いかけ、私達も一斉に走り出した。


**


一階まで降りて、玄関の所で加耶が止まっているのが見えた。
私達は加耶に追いつき、一斉に口を開く。


「メアド聞けた!?」
「まだ……」
「小八は!? どこ?」
「あそこ、自転車置き場のところ……」
「おぉぉぉ!! 早く行ってきな、今一人だしチャンス!!」
「う、うん……!!」


私達が背中を押すと、再び加耶は走り出す。
上靴のまま外に出て、自転車置き場に向かうのを私たちは陰で見ていた。


「小八君、待ってー!」


加耶の声が響き、私達は息をのんだ。
な、なんか私達が緊張する……。


「どうだろう……」
「うまくいくといいなぁ」
「きっと上手くいくよ、加耶なら!」
「うん! 加耶、頑張ってるもんね」


麻里、真枝、あゆ、私の順番で呟く。
皆こうやって頑張ってるのに、私は何してんだか——……。


「こ、ばちくん!」
「あ?」


加耶がもう一度呼ぶと、なんとかハチは振り返ってくれた。
そこから声が聞こえなくなったが、無事にやり取りをしているみたいだ。
しかもハチは、ポケットから携帯を取りだそうとしている。
これはいい感じ——……!?


そう思った瞬間もつかの間、


「……え、邪魔!!」


あゆが叫んだ。
見れば、ハチと加耶の間に


戸 沢 が い る


「戸沢あの野郎ぅぅぅぅ」
「見て、あゆ! 加耶帰ってくるよ」
「え、ちょっとまって、はぁぁ!?」


あゆ大絶叫。
ハチと戸沢はこちらに背中を向け、自転車に乗って消えてしまった。
同時に、加耶は小走りで私たちの元へ駆け寄ってきた。


「加耶、どうだった?」


私達四人は、加耶の顔を見る。
加耶は頬を赤らめていて、息を乱していた。


「……駄目だったぁぁぁぁぁ」
「「「「はぁぁぁぁあああ!?」」」」


加耶が床に膝をついて、叫ぶ。
私達も叫び、加耶の肩を揺らす。


「ちょ、駄目だったって何!?」
「え、何があったの!?」
「戸沢途中で入ってきてたけど何!?」


私達はもう、興奮状態。


「……あのね——……」


加耶は顔を上げ、一から説明してくれた。