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- Re: *愛迷華* (実話) 55話更新! ( No.109 )
- 日時: 2013/06/03 13:13
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: udZFMs3r)
- 参照: ぼよよよん
第五十六話『わからない思考』
美紀ちゃんのカミングアウト。
真枝と加耶のそれぞれの想い。
ハチの気持ち。
孝仁の気持ち。
そして——自分自身の複雑な考え。
かれこれ、孝仁の返事を保留し続けて三日が経っている。
三日も経ったのに、孝仁は相変わらずメールを送ってきてくれていて。
それなのに私は、まだ答えを出せないままで——。
私は、やっぱり逃げていた。
「……はぁ」
こんな自分、嫌になる。
なんで、私なんだろうか。
なんで、傷付く人が出てしまうのだろうか。
誰も傷つかないで、皆で幸せになりたいのに——。
「——……依麻ーっ!!」
最近の日課は、放課後の学祭準備中に廊下に出て、窓の外の景色を見ながら色々考える事。
今日もいつものようにそれをやっていると、加耶が慌てて駆け寄ってきた。
「どうしたの、加耶?」
「聞いて、依麻……っ」
加耶は血相を抱え、私の顔を見る。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「あのね、美紀ちゃんから直接聞いたんだけど……。今ね、美紀ちゃん、小八くんとメールしてるみたい……」
「え?」
美紀ちゃんって、あの矢川美紀ちゃん?
孝仁が好きな美紀ちゃん、ですよね?
私は目を丸くする。
なんでハチと美紀ちゃんが——……。
「で、かやも小八くんとメールしてるんだけどさ……。ブチられてるのに美紀ちゃんとはメールしてるの! で、かやね、美紀ちゃんに直接メールしてみたんだ。そしたらね——……」
「……うん」
「小八くんは美紀ちゃんに、『彼氏いる?』とか『プリ見せて』とか言ってたみたいで……。なんでそんな事聞くのかなーって思って……」
加耶はどんどん声のトーンが暗くなりながらも、真剣に話してくれた。
私は、茫然と立ち尽くす。
だけどすぐにハッとして、口を開いた。
「で、でもさ! 美紀ちゃんは孝仁が好き——……なんだよね?」
「うん……。でもね、依麻。孝仁くんは、依麻の方が可愛いって言ってたみたいだよ」
「え」
な ん と い う こ と で し ょ う
「え、や、うん、そんなことないよ、てかありえないし」
「うーん……。でもさぁ、前に小八くんからメールで、孝仁くんが依麻のこと気になってるみたいなメールきたよね?」
一気に、全身から冷や汗が流れるような感覚がした。
孝仁から告白されたことは、まだ誰にも言っていない。
というか、言えなかった。
俯いて加耶から目を逸らしていると、加耶もなんとなく察したのか——。
もう一度、口を開いた。
「で、最近小八くんと孝仁くん、一緒に泊まってたみたい」
「え? ……それって、いつ?」
「昨日とかじゃないかなぁ? 美紀ちゃんの口調的に……」
加耶はそう言い、小さく唸る。
最近……ってことは、孝仁とのやりとりのメールを、ハチに見られていた?
いや、もしかしたらハチが送ってきたのかも……。
——よくよく考えれば、そうだ。
だって、いつも孝仁からメールが来るときは、ハチからもメールがきていた。
孝仁の告白の時も、きっとハチがいた。
ってことは——。
あの二人、仕組んでる?
「嘘でしょ……」
私は壁に寄り掛かり、もう一度頭の中を整理した。
……ハチも孝仁も、仕組んでるとしたら——……。
もう、二人が何を考えているのかわからない。
「……依麻……?」
頭の中が一気にごちゃごちゃになり、よくわからないけど涙が出てきた。
だって、わからない。
わからなすぎるよ、ハチも孝仁も——……。
加耶は私を心配そうに覗き込み、頭を撫でてくれる。
私は流れ出る涙を拭うことなく、ただ茫然と俯いていた。